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人工呼吸器をつけ全国で初めて普通学校を卒業した歩さんの35年

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人工呼吸器を装着しながら地域の小中高校に通い、大人になってからはヘルパーの介助を受けながら1人暮らしを実現させた女性が、2021年1月に35歳で旅立ちました。彼女の名前は平本歩さ… もっと読む
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人工呼吸器をつけ 全国で初めて普通学校を卒業した歩さん 制度の壁こじ開けた35年(4)

■歩さんが遺したもの  人工呼吸器を付けて、当時前例がなかった在宅生活を4歳で始め、地域の普通学校を卒業した平本歩さん。大人になってからは1人暮らしを実現し、交通バリアフリー問題などにも積極的に提言してきました。  神戸新聞記者 久保田麻依子 ◆パーティー準備 通夜で在宅30周年祝おう  2017年5月3日、母の美代子さんや、兄2人の家族らと大阪・舞洲にバーベキューへ出掛けた。  「みんなおいしそうに食べていました」と日記につづる。2日後に迎える父・弘冨美さんの命日

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人工呼吸器をつけ 全国で初めて普通学校を卒業した歩さん 制度の壁こじ開けた35年(3)

■自立に向かって 人工呼吸器を装着し、当時前例がなかった在宅生活を4歳で始めた平本歩さん。2011年初春、ついに1人暮らしを決意します。 神戸新聞記者 久保田麻依子 ◆1人暮らし 部屋の愛称は「とんちん館」  25歳になった歩さんは2011年春、1人暮らしへの決意を固める。人工呼吸器を付けた同年代の友人2人が、大阪・箕面市で共同生活に挑戦していることに刺激を受けた。そして何にも増して、亡くなった父の弘冨美さんがくれた「自立に向かって邁進せよ」との遺言に突き動かされ、ず

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人工呼吸器をつけ 全国で初めて普通学校を卒業した歩さん 制度の壁こじ開けた35年(2)

■周囲の支え 全力で寄り添った父  人工呼吸器を装着しながら、当時前例のなかった在宅生活を4歳で始め、地域の小中高校に通った平本歩さん。その35年の生涯は、父の弘冨美さんの存在を抜きには語れません。                      神戸新聞記者 久保田麻依子 「制度の壁こじ開けた35年(1)」はこちら ◆人工呼吸器を付けた子の親の会 発足  生後3カ月から歩さんが入院していた淀川キリスト教病院(大阪市)で、人工呼吸器を付けた子の7家族が院内グループとし

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人工呼吸器をつけ 全国で初めて普通学校を卒業した歩さん 制度の壁こじ開けた35年(1)

■病院で一生を過ごす それって幸せ? 人工呼吸器を装着しながら地域の小中高校に通い、大人になってからはヘルパーの介助を受けながら1人暮らしを実現させた女性が、2021年1月に35歳で旅立ちました。 彼女の名前は、平本歩さん。 障害のあるなしにかかわらず普通学校で共に学ぶ「インクルーシブ教育」の草分け的存在として、兵庫県尼崎市を拠点に全国で講演活動をしてきました。 その存在は、亡くなってからも多くの人たちの背中を押し続けています。 「寝たきりのパイオニア」と呼ばれてい