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カエルの島、悪人は動かせない岩、鬼が架けた橋…。兵庫五国の「奇岩」、いくつ分かりますか?

「奇岩」「巨石」「不思議な岩」を巡る物語は、国内外の各地にあり、その岩の大きさ、造形、伝承に心引かれます。

神戸新聞にも、神話に由来する岩から、地域で語り継がれる巨石の伝承、さらには記者が勝手に何かに見立てた奇岩まで、岩に関するたくさんの記事が登場してきました。最近は人気アニメ「鬼滅の刃」に登場しそうな岩の記事も見かけますね。

今回は記者きんぎょばちが、数ある岩の物語から、兵庫五国の但馬、播磨、丹波、淡路、摂津から1つずつ紹介します。

兵庫県内の不思議な伝承や風習についてもっと詳しく読みたい方は、神戸新聞創刊120年連載「新五国風土記」からどうぞ。

座ったカエルに見える?香美町香住区の今子浦海水浴場を見守る「かえる島」。

かえる島

 姿がカエルに似ていることから、無事に帰ることを祈る対象となってきた香美町香住区境の「かえる島」周辺で22日、観光イベント「かえる島絵馬祈願」があり、カエルの人形を飛ばす大会などが開かれた。
 かえる島は高さ約11メートル。かつて北前船での航海に出る人々や家族が、無事な帰港を祈ったとされる。その後、ほしいものが「買える」、自分を「変える」といった願いを抱いた人が訪れるようになり、地元の香住観光協会が絵馬を販売している。
 同日は、この1年間に奉納された約60個の絵馬が焼かれたほか、シーソーのように竹の棒の一方に飛び乗って、もう一方に置いたカエル人形をジャンプさせる「かえる飛ぶ?大会」も開かれた。
 大会で優勝した養父市万久里の女性(25)は「優勝にあやかり、なくしてしまったブレスレットが返ることを祈ります」と話していた。

(2007年7月23日付朝刊地方版より)

まずは但馬から。カエル好きにはたまらない岩です。気になる「かえる飛ぶ?大会」ですが、以下の写真のように、シーソーでカエルのぬいぐるみを飛ばしていたようです。

かえる島ぬいぐるみ

(2011年7月24日付朝刊地方版より)

善人が押せば動き、悪人が押せば動かない。加西市畑町の「ゆるぎ岩」伝説。

ゆるぎ岩

 善人が押せば動くが、悪人が押しても動かない。
 人の内面を試す巨石が、加西市畑町字イザナギ山という神々しい地にあるという。それって、まるでイタリア・ローマの「真実の口」じゃない?
 「ゆるぎ岩」。高さ約4メートル、膨らんだ中央部の周囲は約8メートルある。別の岩に乗っかるような形で、山中の崖の上に立つ。
 地元ボランティアガイドの男性(74)がごつごつした表面を両手で押した。「ほら、揺れてるでしょ」。えっ、どこ? 揺れてますか?
 「村人が善人になるように」と岩に呪文をかけたと伝わるのは、天竺(てんじく)(インド)から渡来した法道(ほうどう)仙人。650(白雉元)年に法華山の古刹(こさつ)、一乗寺(加西市坂本町)を開いたとされる人物だが、その素性は謎に包まれている。
 加古川の流れに沿って点在する、摩訶(まか)不思議な足跡をたどった。

(2017年12月24日付朝刊1面より)

播磨の伝承や風習を取材していた際、記者きんぎょばちが出会った奇岩です。記事に登場する法道仙人は、播磨一円にその足跡を残した不思議な仙人です。瞬間移動したり、雲に乗って空を飛んだりできたそうです。

鬼が置いた?丹波、丹波篠山市境、鐘ケ坂(かねがさか)峠の「鬼の架け橋」。

鬼の架け橋

 鬼こわっ。
 鬼はもちろん怖いけど、この風景も相当怖い。
 篠山市と丹波市の市境、鐘ケ坂(かねがさか)峠。標高540メートルの金山(きんざん)を登ること小一時間で目に飛び込んでくるのが、「鬼の架け橋」だ。
 V字形の岩場に横たわる巨岩越しに、こわごわ下をのぞき込む。下界ははるかかなた。少し風でも吹こうものなら、足はガクガク、目がくらむ。これはもう、いけません。さすが、あの浮世絵師歌川広重も描いた奇勝である。
 今では新鐘ケ坂トンネルのおかげで峠越えも楽々。だけど、昔はさぞ恐ろしい難所だったことだろう。
 橋を架けたのは、源頼光の鬼退治で知られる大江山の鬼との言い伝えがある。多可町との境の篠ケ峰にも鬼の民話があるというし、篠山の旧陸軍歩兵第70連隊は別名、〝丹波の鬼〟だ。
 丹波では、鬼が出るか、蛇が出るか。丹波竜が出た丹波市山南町へ、ひとまず峠を後にした。

(2018年3月4日付朝刊1面より)

丹波市と丹波篠山市の境界にある金山、鐘ケ坂峠。近辺にある法道仙人ゆかりの常勝寺(丹波市山南町)では毎年2月、節分行事「鬼こそ」が営まれます。目玉の飛び出したユーモラスな鬼が登場します。

国生み伝説の舞台、南あわじ市沼島の「上立神岩(かみたてがみいわ)」。

上立神岩たて

 天に真っすぐ向かい、海上に堂々とした姿でそそり立つ。「上立神岩」は、高さ30メートルにも達し、周囲に奇岩が多い場所でも異彩を放つ。
 淡路島の南約4・6キロの沖に浮かぶ沼島の南側に位置する。勾玉(まがたま)の形をした周囲約10キロの小さな島は、古くから国生み神話の「おのころ島」とされてきた。上立神岩はイザナギ、イザナミの2神が立てた「天(あめ)の御柱(みはしら)」といわれる。
 神話では、天上界の神々から国造りを命じられた2神が天沼矛(あめのぬぼこ)で海原をかき混ぜると、矛の先からしたたり落ちた潮が積もり固まって島になった。潮がおのずから凝り固まったことから「おのご(こ)ろ島」と名付けられたという。2神はこの島に降り立ち、まず「天の御柱」を建てた。そして淡路島を生み、次々と日本列島を生んでいく。
 ロマンあふれる沼島には多くの観光客が足を運ぶ。住民ら15人でつくるボランティアガイド「ぬぼこの会」によると、結成した2007年に案内したのは約800人だったが、11年には過去最多の3400人以上になった。上立神岩は、ほとんどが見物希望する一番の人気スポット。陸や海上から眺め「迫力がある」「神秘的」と喜ぶという。

(2012年1月3日付朝刊地方版より)

淡路島の南に浮かぶ沼島の奇岩は、国生み伝説の岩として人気。くぼんだ形にちなみ、恋愛成就の新たな伝承も生まれているようです。

上立神岩ハート

 南あわじ市沼島の南側海上に浮かぶ、矢尻のような形をした奇石「上立神岩」が、恋愛成就や夫婦円満のシンボルとして話題になっている。石の中央部がハート形にくぼみ、「国生み神話」ゆかりの地でもあるため、テレビやインターネットで紹介される。岩を背景に写真撮影をしたり、手を合わせたりするカップルが絶えないという。
 上立神岩は高さ30メートル。「国生み神話」でイザナギとイザナミの2神が周囲を回って出会ったという「天の御柱」ともいわれ、地元で古くから信仰される。
 地域おこし協力隊の男性隊員(37)は昨年、上立神岩を望む歩道で、若いカップルや年配の夫婦が記念撮影する姿を4回ほど見かけた。岩のくぼみに合わせてそれぞれの手を合わせてハート形を作っていた。頼まれてシャッターを押したこともあり、「みんな恋愛成就の御利益があると話していた。宣伝していないのに、口コミで人気が広がっている」と驚く。

(2014年2月22日朝刊地方版より)

県道の真ん中に残る「夫婦岩」(西宮市鷲林寺町)。動かすと「たたりがある」?!

夫婦岩

 西宮市の市街地北部を走る県道の真ん中に、「動かすとたたりがある」と地元で言い伝えられる大きな岩がある。工事のために動かそうとした関係者が相次いで亡くなった―といううわさがその根拠。真相ははっきりしないものの、県道の改修工事を予定する兵庫県西宮土木事務所は「ないがしろにできない」と、岩を避けて整備する異例の対応を決めた。
 西宮市鷲林寺(じゅうりんじ)町の県道大沢西宮線にある通称「夫婦(めおと)岩」。高さ約2・5メートル、幅約5メートルで真ん中に亀裂があり、二つの岩が寄り添うように並んでいる。県道はこの岩を挟んで前後で北行き、南行きに分かれている。
 地元では古くから「動かそうとするとのろわれる」とうわさされる。「1938年の阪神大水害の復旧工事で国が爆破しようとしたが、工事関係者が急死して中止されたらしい」と地元のお年寄り。ただ、西宮市や道路を管理する県西宮土木事務所にこうした事実を裏付ける記録はない。
 交通量が多い割に道路幅が狭く、見通しの悪いカーブとなっていることから、県は夫婦岩の南北約1キロの区間で拡幅工事を計画。夫婦岩を動かさないように道路全体を西側にずらす形で設計した。夫婦岩の周辺は緑地帯として整備、住民が憩える空間にするという。事業費は約8億円。既に一部で着工しているが、県の財政難で完成は当初予定の2009年度末よりも遅れる見通し。
 「これまで事故がなかったのは奇跡的。今回の整備で安全性が高まる」と同事務所。「『言い伝え』は担当者に引き継がれ、計画段階でも岩を動かそうという声は出なかった」という。「村の宝」と父親から教えられてきたという近くの男性(82)は「地域のシンボルを残せてよかった」と話した。

(2009年1月8日夕刊より)

最後は摂津から、県道の真ん中に残された巨石の記事でした。他にも「鏡岩」「ゴリラ岩」「竜ケ鼻」など楽しい岩の話題がたくさん。これからも「町ダネ」ならぬ「岩ダネ」に注目です。

<記者きんぎょばち>2008年入社。「ゆるぎ岩」を2017年に取材した際、自分自身でも押してみました。動いたような、動かなかったような。次に押したときには「動いた!」と自信を持って言えるよう生きていきたいものです。

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