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人工呼吸器をつけ 全国で初めて普通学校を卒業した歩さん 制度の壁こじ開けた35年(4)

■歩さんが遺したもの

 人工呼吸器を付けて、当時前例がなかった在宅生活を4歳で始め、地域の普通学校を卒業した平本歩さん。大人になってからは1人暮らしを実現し、交通バリアフリー問題などにも積極的に提言してきました。

 神戸新聞記者 久保田麻依子

◆パーティー準備 通夜で在宅30周年祝おう

 2017年5月3日、母の美代子さんや、兄2人の家族らと大阪・舞洲にバーベキューへ出掛けた。

 「みんなおいしそうに食べていました」と日記につづる。2日後に迎える父・弘冨美さんの命日に合わせた家族のイベントだ。

自身の在宅生活や1人暮らしまでの経緯を本にまとめた平本歩さん

 歩さんの病気は進んでいた。辛うじて動いた指先も筋力がなくなり、パソコンの操作は舌先にセンサーを付けてするようにした。体の不自由さが増しても、新幹線や飛行機に乗って全国で講演を続けた。

 陽光を浴びて父に思いを巡らせたら、父が病院で危篤になる直前、母に告げたという言葉を思い出した。

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