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ミナト神戸と六甲山系、ときどき潜水艦―。編集フロアから見えるもの

神戸新聞神戸本社は神戸港に近い神戸ハーバーランドにあります。神戸市街などを一望できるロケーションを生かし、本社ビルから撮影した写真が紙面を飾ることも少なくありません。そこからどんな景色が見えるのか―。播州人3号が紙面に掲載された写真や記事で紹介します。

神戸新聞社はJR神戸駅から歩いて約10分のところにあります。大型商業施設「umie(ウミエ)」や「神戸アンパンマンこどもミュージアム」に近く、家族連れや観光客らで賑わうエリアです。

最寄りの神戸駅はJR主要駅の一つですが、神戸市内最大は2駅東にある三ノ宮駅です。

新型コロナの感染拡大後、スマートフォンの位置情報などを活用して人出が分析されることが多くなりました。
大阪ならJR大阪駅前、京都ならJR京都駅前がよく取り上げられますが、神戸の場合は神戸駅ではなく、三ノ宮駅前です。

この辺の鉄道の話題は、社内にも複数の「専門家」がいるので、別の回に詳しくお伝えしましょう。

鉄道コラムをまとめた投稿はこちら

編集局は13階にあります。ほとんど柱のない広いフロアに、報道部、経済部、運動部、映像写真部のほか、見出しやレイアウトを担当する整理部や、神戸新聞NEXTの配信を担うネクスト編集部、DX推進部が置かれています。

編集フロアの窓からは神戸港を出入りする客船や六甲山系の山並み、三宮の高層ビル群が望めます。海側には人工島のポートアイランドやその先の神戸空港が見え、西には淡路島もあります。

フロアの窓は固定されているため、窓を開けて潮風を感じたり、客船の汽笛に耳を傾けたりはできませんが、ガラス窓を打つ雨粒に夕立を知り、ビルの揺れで台風の接近を感じます。火事の一報が入れば、窓際に寄って現場方面に目を凝らします。

街の変化に気付くのはダントツで映像写真部員です。
フロアの北東の角部分で勤務し、外の様子が目につきやすいこともありますが、ここは職業柄と言っておきましょう。
ちょっとした変化に敏感なこともベストショットをものにする能力です。

映像写真部のカメラマンが手がけた写真をいくつか紹介します。

虹架かる神戸の街

神戸市内は21日、低気圧の影響で断続的に雨が降り、最高気温は前日より4度近く低い12・8度だった。雨は午後には上がり、雲間から日が差し込むと、市街地に鮮やかな虹のアーチが低く架かった=同日午後、神戸市中央区東川崎町1から望む

(2017年3月22日付朝刊より)

写真左手の赤い塔が神戸港のシンボル、神戸ポートタワーです。神戸の街を包むように架かる虹を編集フロアから撮影しました。

短時間で消える虹の写真が掲載されることが少なくありません。それだけ映像写真部員が周りに気を配っている証ではないでしょうか。

猛暑払う光の供宴
みなとこうべ海上花火大会

 神戸の夏の風物詩「第49回みなとこうべ海上花火大会」(神戸市、神戸新聞社など主催)が3日、神戸港メリケンパーク沖で開かれた。約6500発が夜空を彩り、ひとときの清涼感に包まれた。
 この日の神戸は、開幕の午後7時半になっても30度近い暑さ。港を埋める浴衣姿の男女や家族連れら約31万人(主催者発表)も、うちわや飲み物を手に、光の供宴を待ちわびた。
 オープニングは、神戸ポートタワーをイメージした深紅の尺玉が大輪の花を咲かせた。次々と打ち上げられる花火は、虹色に変化したり、光の輪を乱舞させたりしながらミナトを染め、観客は歓声を上げながら写真に収めていた。

(2019年8月4日付朝刊より)

本社屋上から見ると、海上の花火をこんなふうに収められます。

六甲山の山並み 雪化粧

 上空に真冬並みの強い寒気が流れ込んだ影響で16日、六甲山系の山頂付近や神戸市北区の住宅街などでは未明から雪が降った。夜が明けると、山並みが白くなった様子が市街地から見られた。
 神戸地方気象台によると、最低気温は神戸で4度、姫路市2・5度、明石3・6度。いずれも3月上旬~中旬並みだが、暖冬傾向の中、冬を思わせる空模様となった。

(2020年3月16日夕刊より)

先ほどのポートタワーを右手に配した六甲山の冠雪です。
こちらも本社ビルからの撮影です。

神戸の街は、この六甲山と海に挟まれた狭いエリアに栄えました。たいていの場所から六甲山系の山並みが見えるため、「山は北」と感覚的に方角が分かります。

視線を少し西に向けましょう。
本社のすぐ西には川崎重工業神戸工場があり、運がよければ停泊している潜水艦が見えます。
初めて目にしたときは、こんなにもばっちり見えてもいいのか、とどぎまぎしました。

編集局の会議室に入って「おっ、今日もとまっとるな」という声が窓際から聞こえれば、それは潜水艦のことです。

修理や保守点検などが目的なのでしょうか、2隻のときもあります。
こんな珍しい場面に出くわすこともあります。動画でもどうぞ。

貴重?潜水艦の入港シーン
1時間かけ小型船舶とロープで慎重に

 1月29日正午すぎ、神戸ハーバーランドの南側にある川崎重工業神戸工場(神戸市中央区)で、1隻の潜水艦が接岸した。ミナト神戸を一望できる神戸新聞神戸本社からは、小型船舶が“チームワーク”を発揮し、手際よく作業する姿が確認された。
 潜水艦が最接近すると、タグボートのような別の船舶2隻が、潜水艦を押し込むようにして岸壁との距離を少しずつ縮めていく。さらに、甲板と陸上の作業員がロープで引き合うなどし、傷つけないように慎重に接岸。入港作業は1時間足らずで完了した。

(2021年1月29日神戸新聞NEXTより)

息の合った船の操縦で潜水艦を接岸させる作業の動画はこちら

港とともに培われてきた職人技ですね。
動画を見ると、潜水艦を押したり、引いたりと無駄のない動きで接岸させています。
作業が終われば、そのまま沖へ。
それが作業手順とはいえ、去り方もかっこいい。

この工場の少し西に三菱重工業神戸造船所があり、こちらでも潜水艦が建造されています。

担当する経済部員に尋ねると、防衛省の潜水艦を手がけるのは国内ではこの2カ所のみといい、修理や検査に寄港する潜水艦を目にする機会も多いのでしょう。

フロアの配置の関係で、南東側の景色を見ることが圧倒的に多いのですが、反対側の北側にも窓があり、そちらからは主に神戸の住宅街が広がります。
神戸市兵庫区や長田区の街並みです。

今度は写真ではなく、記事で紹介しましょう。
20年ほど前のものですが、「『西向きの窓』に立って」というタイトルで、報道部の前身、社会部の記者がこんなコラムを手がけました。

 神戸ハーバーランドの南端。社会部はビルの13階にある。
 窓は東を向いている。メリケンパーク、六甲山、港町。神戸らしい光景が広がる。
 同じフロアに西向きの窓がある。こちらは、ぎっしりと連なる家並みだ。マンション、低層住宅、路地。兵庫から長田、須磨へと市街地が続く。
 昨年、政治が動いた。国政、首長選挙。行き詰まったままの経済。県内でも大きな事故、事件が相次いだ。テロ、戦争。慌ただしい年だった。
 原稿をまとめながら、日に何度か西向きの窓の前に立った。たくさんの暮らしがにおいだってくるようで、不思議と気持ちが静まった。
 日々を生きる。一つ一つの屋根の下。「生活」という不変の営みを思った。励まされる思いがした。
 「鳥の目、虫の目」という。虫の目で、路地に分け入っていく。激しく動く時代の中で、何が大切なのか。目を凝らし、耳を傾けたい、と思う。

(2002年1月8日付朝刊より)

当時、社会部にいましたが、どちらかというと神戸港や六甲山、三宮など「神戸っぽい風景」に目が向きがちでした。同じフロアにいて、こんな見方もできるのかと思いました。

編集フロアは、小学生らに本社内を案内する「会社見学」のコースにもなってますが、中で働くわれわれが普段、どんな風景を目にしているのかを伝える機会はなかなかありません。
今回紹介したような構図の写真を紙面などで目にしたら、「これってもしや?」と撮影場所についても想像してみてください。

<播州人3号>
1997年入社。本社勤務には宿直があります。新聞製作が終わり、最後はデスクが消灯して仮眠室に移ります。電気の消えたフロアの窓に神戸の街が映ります。未明のため派手派手しさはありませんが、しばし見とれてしまう景色です。

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