記事を掲載した後の反響を、取材先からうかがうことがあります。取り上げた個展が盛況だったと聞けば、創作に関わったわけでもないのに、なんとなく誇らしく感じます。記事がきっかけで予想外の展開となって、慌てて「続報」を用意することもあります。拡散力ではSNSに及ばないと言われる新聞ですが、原稿に込めたメッセージが「届いた」と感じられる3話を、播州人3号が紹介します。
まずは、運命の2人の再会を記事が取り持った話です。
増水した川に転落、差し出された手につかまり… 命の恩人尽きぬ感謝
(2020年4月30日付朝刊より)
まさに危機一髪の救出です。
命の恩人を捜す記事は、こんなふうに掲載されました。
夢前川に転落 記憶障害の76歳男性 救助した恩人探す 夫婦で「感謝伝えたい」
(2020年4月26日付朝刊から)
何とかして見つけ出したいという夫婦の熱い思いが記事から伝わります。そのためでしょうか、反応は掲載当日にありました。
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書いた記事がどれぐらい読まれたか。
新聞の発行部数なら分かりますが、記事がだれに見られたかを測るのは容易ではありません。そんな中で、今回は間違いなく「届いた」と感じられるケースですね。
新聞社、新聞記者というと、どこか取っつきにくいイメージがあるかもしれませんが、紙面は読者の皆さんとともにつくっています。
神戸新聞では皆さんの声を取材に生かす双方向型報道「スクープラボ」を始めています。こちらもぜひご利用ください。
続いては、読者の応援の気持ちが毛糸になった話題です。
毛糸の寄付 どっさり50箱超 ボランティア団体 本紙掲載後、80人から
(2021年7月7日付朝刊より)
寄付を募る記事は、それほど大きな扱いではありませんでしたが、気持ちはしっかりと伝わったようです。
高齢者をだます特殊詐欺など「世知辛い」と感じる事件が相次ぎ、新型コロナの感染拡大が人間関係をさらに希薄にするのではないかと心配されます。けれど、こんな記事を目にすれば、世の中捨てたもんじゃないという気持ちになりませんか。
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最後は播州人3号が取材した話です。10年も前ですが、当時のことをはっきりと覚えています。
市民センターの改修に伴い、中にあった図書コーナーの閉鎖が決まりました。開設に関わった姫路市職員のエピソードを聞き、何とか東北支援につながればと原稿にしました。
姫路市職員の遺志継ぐ蔵書 児童書70箱分 東北へ
(2011年9月9日夕刊より)
小さな図書コーナーに、そんな経緯があったのかと紙面で紹介すると、すぐに協力の申し出がありました。
連絡は予想外の人からでした。
東日本大震災 元姫路市職員の蔵書70箱分 兄の遺志 弟が岩手へ 報道知り運送に協力高井德夫さんら3人
(2011年9月23日付朝刊より)
記事を書く際、遺族について市役所などに尋ねました。高井さんが事故で亡くなられたことは確認できましたが、それ以外の手がかりはつかめませんでした。それが紙面に掲載後、まさか弟たちとつながるとは―。
東北に向けて本を積み込む作業に、すがすがしい気分でカメラを向けました。
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紹介したのは播州(姫路)の記事ばかりですが、ほかの地域でも紙面掲載後に同じような反響がたびたび寄せられています。
「私たちは公正に伝え、人をつなぎ、くらしの充実と地域の発展につくす」
これが神戸新聞の社是です。
記事や紙面を通じて人をつなげることは、私たちの重要な目標の一つなのです。
<播州人3号>
1997年入社。現場を回っていたころは見出しの大きさや記事の扱いばかり気にしてましたが、最近は記事の中のコメント部分をじっくり読むことが多くなりました。「なるほど」「さぞかし」と感じる機会がかなりあります。
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