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映像写真部の奥義、兵庫の風景を「ドローン」で撮影すれば…

こんにちはTFです。神戸新聞では取材にドローン(小型無人機)を使うことがしばしばあります。報道の現場では空撮(ヘリや飛行機から撮影する)が広く知られており歴史もありますが、地上から数百メートル上空で撮影しています。通常の空撮は、地域全体を俯瞰しながら重要な部分を望遠レンズでクローズアップすることを得意としていますが、ドローンのように被写体に迫り立体感のある写真や映像を撮ることは困難です。

威風堂々の世界遺産・国宝「姫路城」

最初に見てもらうのは世界遺産・国宝「姫路城」の写真です。世界遺産登録25年の記事と一緒に掲載されたもので、大天守の迫力とともに姫路市の中心街が現代の城下町のようにも見える1枚です。撮影許可のギリギリまで近づくことで、ヘリに乗っていては撮れないアングルに仕上げています。

姫路城ドローン

 姫路城(姫路市)が日本初の世界文化遺産に登録されてから11日で25年になる。登録約1年後の阪神・淡路大震災で集客が落ち込んだが、「平成の大修理」を経て入城者数は登録前の3倍に。その後も訪日外国人観光客(インバウンド)の急増を追い風に登録前の2倍程度で推移する。城として単独登録された国内唯一の世界遺産。現在22件に上る国内の遺産登録の中でも、その存在感は際立っている。

                (2018年12月11日付朝刊より)

錦織りなす秋の氷ノ山

兵庫県は四季折々の風景が楽しめるのも魅力のひとつです。桜と紅葉の見所を紹介するのは紙面上でも定番になっていますが、写真の撮り方や紹介の仕方を毎年変えるのは結構たいへんで、知恵を絞る部分でもあります。ここでもドローンを使うことで大きく写真を変えることができ、とても重宝しています。

氷ノ山ドローン

 兵庫県最高峰の氷ノ山(養父市、標高1510メートル)の山頂周辺でブナやカエデ、ナラなど広葉樹が鮮やかに色づき始めた。多くのハイカーらが雄大な景色を楽しんでいる。早朝から晴れ渡った21日午前、登山道「大段ケ平(おおだんがなる)コース」から山頂を目指した。コース途中の避難小屋付近から小型無人機(ドローン)を飛行させると、眼下一面の山肌が紅葉し、パノラマの絶景が広がった。

                 (2020年10月22日朝刊より)

まさに「錦秋」という言葉がぴったりの気持ちのいい風景が広がっています。

春色の車窓、川西・妙見の森ケーブル

ケーブルカードローン

ガタンゴトン―。ハイカーを乗せたケーブルカーが山頂に向かってゆっくりと進む。満開のソメイヨシノやエドヒガンが軌道沿いを彩り、まるで天上の楽園に延びる一筋の道。川西市黒川の妙見山で、麓と山上にある広場までの間を運行する「妙見の森ケーブル」。600メートルの距離を5分かけて移動する。

                   (2021年4月1日朝刊より)

上空から見下ろすとピンクの山並みを走るケーブルカーがミニチュアのようにも見え、不思議な気分になる1枚です。動画で見ると、もっと迫力があります。動画はこちら

兵庫に刻まれた災害の痕跡

次にご覧いただきたい写真は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の被害をそのまま保存、展示する「神戸港震災メモリアルパーク」です。97年に整備された同パークは、これまでは人の目線の高さで撮った写真でしか紹介されませんでしたが、初めて真上から撮影できました。グーグルアースでも拡大すれば雰囲気はつかめそうですが、太陽光が降り注ぐ時間にドローンで撮影したことで、細やかなディテールまでも写し込むリアルな写真になりました。

メモリアル公園ドローン

 ひび割れ、傾き、海中に沈んだ波止場。26年前の激震による傷痕が、当時のまま残されている。校外学習で訪れた小学生らが身を乗り出して水中をのぞく。大震災の爪痕を目に焼き付けていた。「神戸港震災メモリアルパーク」(神戸市中央区波止場町)は阪神・淡路大震災を後世に伝えるため、「メリケン波止場」の被災した場所を一部保存した。

                  (2021年1月8日付夕刊より)

上記の写真は、震災から26年が経過した今年1月に、震災当時の惨状を今に伝える場所や、災害に備えるための建造物をドローンで撮影したシリーズの中の1枚です。防災に関わる情報を身近に感じてもらったり、わかりやすく伝える手段の中で写真は重要な役割を担っています。動画はこちらから

また、実際の災害の現場でも使ったことがありました。2018年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた宍粟市の山間部の取材です。被害が出た直後の復旧作業の様子を撮影しましたが、倒木が川をふさぎ周辺に被害が拡大したことがよくわかりました。

宍粟水害ドローン

                 (2018年7月10日付朝刊より)

これまでに紹介した写真はすべて、撮影する地域の管理者の許可を得て撮影しています。また、国交省に申請を出し兵庫県内でドローンを飛行させることができる許可も毎年更新しており、複数人の映像写真部員がペアになって取材できる態勢を整えています。

<TF>
1993年入社。現在は映像写真部デスク。写真を撮ることよりもカメラのお世話や動画編集が主な業務になりつつあります。元ドローン担当者ですが、パイロットのサポート役でときどき現場へ出ています。

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