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新兵庫〝珍百景〟Ver.4

  いきなり猫か? と思わないでください。よ~く見てください。「お風呂場で水を飲んでる?」。間違いではありませんが、なんと腰部分に「♥(ハート)マーク」があるじゃないですか! 〝珍百景〟に認定です(笑)
 こんにちはド・ローカルです。おなじみとなった新兵庫〝珍百景〟。第4弾は、度肝を抜かれる、珍しい光景をお楽しみください。

僕のハート模様、見ると恋がかなうかも

 「ネコの腰に見事なハート模様があるんや。すごいで」。興奮気味の電話に興味を抱き、宍粟市波賀町斉木の女性宅を訪ねた。
 「初めての人は怖いみたい」と女性に抱かれて現れたのが雑種の雄、マル(2)。右腰に丸い模様があり、体をかがめると♥になるという。警戒するマルに、動物写真家・岩合光昭さんのように優しく声をかけながらカメラを向けた。
 「シャー!!」。毛を逆立てて女性の腕をひっかくと、たちまち部屋から飛び出してしまった。やはり今日は機嫌が悪いらしい。
 「ハート模様見れたら恋がかなうことにして、道の駅の名物駅長とかどう?」と女性。いいアイデアですが、きっと気まぐれの恋ですね。愛妻家の私には猫に小判です。

(2019年8月16日神戸新聞朝刊)

一晩で伸びた? 宍粟市の公民館にカヤの巨木


宍粟市一宮町福知

 むかーし、むかし、31年ほど昔。宍粟市一宮町の福知という村で公民館を増築したそうな。村人が神様のお告げでカヤの実を土間に置いたら、みるみる芽が出て屋根を突き破り、一晩で幹周りが220センチもある巨木になったそうな。
 本当のことは当時の者がみんな死んでしもうて分からんが、ここはもともと神社の境内。増築する土地が狭もうて村人は困っておったんじゃが、鎮守の杜(もり)も小さいので大木はなるべく切りとうない。それで屋根に穴を開けて折り合ったということじゃ。
 今ではインスタ映えを狙って若者も来るようになった。週末の朝市はたいそうにぎわい、村は栄えたということじゃ。めでたし、めでたし。

(2019年8月19日神戸新聞朝刊から)

浜に神秘の光景「海の瞳」正体は 新舞子海岸

たつの市御津町

 たつの市御津町の新舞子海岸。ヤドカリを手のひらで遊ばせ、じりじりと午後の日差しに焼かれることしばし。潮が引いた砂浜で神秘的な光景に出くわした。
 レンズのように光をたたえたそれは、まるで海の瞳のよう。波が残した模様と相まってなんともエキゾチックだ。
 実はこれ、直径1・2メートルもある大きなタイヤ。いずこより流れ着いてか幾星霜。いまやフジツボが固着し、水がたまったタイヤの中には海草が生えている。
 「お客さんを待ち続けている温泉みたい」とは地元の男性。時の流れに洗われ、落日とともに再び海に没していく姿はどこか寂しげ。今宵(こよい)も満天の星が慰めてくれることでしょう。

(2019年8月19日神戸新聞朝刊)

その数100個以上 仕留めた鹿の頭蓋骨ずらり

神河町川上

 ススキの名所、砥峰高原(神河町川上)へとつながる集落の坂道を上っていくと、川向こうの小屋に不気味な気配を感じた。窓越しの棚に並ぶ頭蓋骨。極悪人と対峙(たいじ)する覚悟で近寄ると、仙人のような男性(75)が気さくに通してくれた。小屋の主で、猟師歴50年。角付きの鹿の骨がざっと100個以上ある。
 「グループで狩ると後日、記念に欲しがる人がいる」ため、仕留めた人の名前と日付を上あごに記して残す。左右に大きく開いた立派な角は「木が若く広々とした山で育った証し」。明快な解説に聞き入る。「ここで寝たら100パーセント金縛りに遭う。数の力ってすごいよな」。
 私、急用を思い出しました。さようなら。

(2019年9月26日神戸新聞朝刊から)

 ハート柄のネコ。屋根を突き抜けるカヤの巨木。タイヤが作り出す海の瞳。そして、100個を超えるの鹿の頭蓋骨。度肝を抜かれましたか?
兵庫の西播地域でみられる珍しい光景を集めてみました。

<ド・ローカル>
 1993年入社。今回は3年前に神戸新聞の地域版で「まちある甲子園」という連載をしたものの中から、秀逸な4本をピックアップしました。いずれもまちを歩いて記者が見つけたもの、市民から寄せれた情報を基に記事にしたものです。足を運び、記者の知恵を振り絞って書いた原稿と写真。どれも、地方紙の底力を感じる記事です。

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