
健やかな成長を願って―。「端午の節句」の迎え方
5日は「端午の節句」、「こどもの日」です。五月人形やこいのぼり、柏餅、ちまき、菖蒲湯などで男の子の健やかな成長を祈願します。紙面では、それ以外の祈り方、祝い方も見られます。播州人3号が紹介します。
伝統家屋に武者のぼり
姫路で展示

大正時代に作られた武者のぼりなどが並ぶ「端午の節句展 五月人形と武者のぼり」が、県指定重要文化財・林田大庄屋旧三木家住宅(姫路市林田町中構)で開かれている。伝統家屋の中に五月人形や武者のぼりなど約80点が展示され、風情を漂わせる。
同住宅は江戸時代、林田藩の大庄屋だった三木家の住居。展示は同住宅を管理するNPO法人「新風林田」の主催で3回目。
武者のぼりは江戸時代、男児の健康や立身出世を願い庭などに飾られ始めた。展示では最長約14メートル、豊臣秀吉や平清盛などが描かれた7本が土間の梁につるされている。約1・2メートルと小さなのぼり旗も5本ある。
五月人形は大正から昭和にかけて作られた約40点が並ぶ。同法人の理事兼事務局長(59)は「飾る家庭が減ったが、この伝統を若い世代に引き継ぎたい」と話した。
こいのぼりは、この武者のぼりの付属品だった「コイの滝登り」を題材にした小旗が形を変えたという説もあるようです。
「三反のぼり」と呼ばれ、こいのぼりが普及する前に立てられた飾りを扱った記事も見つかりました。

時代ごとに飾るものも異なります。
小野 休館中の好古館企画
端午の節句飾り 紙面でご紹介
明治期以降の71組美しく



端午の節句飾り企画展を開催していた小野市立好古館(同市西本町)が緊急事態宣言を受け、休館となった。開館中は、人形やよろいかぶとなど、市内外の旧家などから同館に寄贈された明治期―平成期の71組を展示。美しい品々を紙面で紹介する。
5月5日の節句で、古くからショウブを軒につるすなどして邪気を払う習慣があったという。ショウブと「尚武」の音が共通していることから、鎌倉時代には武家がよろいやかぶとを飾るようになった。
江戸中期にはミニチュア甲冑や人形を座敷に飾る風習が庶民にも広がり、こいのぼりなどとともに一般化していったという。
展示で目を引くのは横9メートル、縦2メートル40センチの大型展示台に置かれた人形やよろいかぶと。中でも、小野藩の家老だった伊藤家に伝わる、明治期に作られたよろいかぶとは、職人による精巧な飾りが印象的だ。
巨大なのぼりは、大正時代の逸品。長男の誕生を祝い、白地に家紋と竜虎図を描いた作品で、こいのぼりが普及する前に作られていた「のぼり」の様式を今に伝えている。同館の藤原友子学芸員(48)は「ひなまつりより地味なイメージだが、五月人形の精巧な飾りは魅力的」と話している。
ちまきの作り方にも特徴的なものがあります。
2種類の葉で包む〝奇跡〟のちまき
川西・黒川地区

旧暦の端午の節句に合わせ、川西市黒川地区で4日、カシワとヨシの2種類の葉で餅を包む全国的にも珍しい「ちまき」が作られた。全国各地で伝統のちまき作りが途絶える中、研究者からは「今でも食べられるのは奇跡」との声が上がる。
ちまきはササの葉で餅を包むのが一般的。一方、黒川地区ではカシワで餅を包み、その上にヨシの葉を載せ、い草で縛る。侍のまげに見立てた形で、子どもたちの健やかな成長を願うという。
炭焼き農家の女性(73)が地区でただ一人作り続け、この日は同級生らと約150本を包んだ。「蒸すと葉の香りが餅に移り、本当においしいのよ」とにっこり。
かしわ餅とちまきを包む植物について論文を執筆した服部保・兵庫県立大学名誉教授(植物生態学)によると、北摂地方一帯で作られていたが、今では女性宅と宝塚市・西谷地区だけに。服部教授は「身近な里山の植物を使ったちまきはほとんどなくなり、文献しか残っていない。無形民俗文化財に指定してはどうか」と話していた。
カシワとヨシの2種類が珍しいようです。
こちらはショウブとヨモギを組み合わせた風習です。
播磨地域の伝統行事を紹介するシリーズで取り上げられていました。
神河町宮野
一家で願う 健康と成長

庭先の巨大なこいのぼりの下、日本瓦の屋根にショウブとヨモギが並ぶ。仏間では、ショウブの葉で鉢巻きをした男の子を曽祖母や幼い姉らが囲んだ。
黄金に輝く麦と青々とした稲が集落を彩る神河町宮野地区。4世代6人で暮らす加門さんは、旧暦5月5日の端午の節句の行事を月遅れで催す。今年は生後9カ月の直也ちゃんの初節句も合わせて祝った。
端午の節句とショウブの縁は深い。ショウブの香りと剣の形をした葉が邪気や疫病をはらうとして、古代より薬草のヨモギとともに門などに飾られたという。江戸時代には、ショウブが武道を重んじる「尚武」や「勝負」に転じ、武者人形やこいのぼりに男児の健やかな成長を託すようになったとされる。
昼前、ショウブとヨモギを集めに、祖母富恵さん(60)は直也ちゃんの姉友花ちゃん(3)の手を引き近所の家を訪れた。庭に咲くショウブを譲ってもらい、ヨモギは帰りの道ばたで青々としたのを選んで摘んだ。
束ねたショウブとヨモギを屋根に載せるのは男仕事だ。父圭介さん(36)が邪気が入ってこないよう、三つの束を玄関の屋根に並べた。「明治のころからは確実に続いている」と富恵さん。
直也ちゃんには、富恵さんが「これは魔よけよ。大きくなってね」と頭にショウブの葉を巻き、圭介さんが初節句の時に着た小さな紋付きを羽織らせた。
脈々と受け継がれている5月の行事です。
実は「三反のぼり」の記事にある写真の1枚に、い草で束ねたショウブとヨモギのことが紹介されています。
2008年の別の記事では、かつて三田市にあった「菖蒲さし」と呼ばれる行事が取り上げられ、「菖蒲の根が胃腸薬として使われていたことなどが由来とされ、邪気を払おうと香りの強いヨモギも巻いて屋根瓦に投げるなどし、一晩さらした後、風呂で香りを楽しんだという」とありました。
今は見かけることがありませんが、「端午の節句」に一般的な行事だったのかもしれません。
<播州人3号>
1997年入社。子どものころ、播州では「屋根より高いこいのぼり」が泳いでましたが、神戸ではマンションのベランダのこいのぼりが目立ちます。大きさの違いはあれ、子を思う親の気持ちは同じですね。