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驚愕の○○年待ちも。届くまで首がなが~くなりそうな商品を集めました

「需要と供給」のバランスなんでしょうか、注文してもすぐには届かない品があります。オーダーメードの一点物だったり、職人の技が光る工芸品だったり。いくら並んでも買うことはできず、ひたすら待つのみです。長い場合は手にするまでにどれぐらいかかるのか。播州人3号が集めてみました。最後の話題には仰天するはずです。

まずは伝統の淡路瓦とコラボした楽器です。
注文から発送まで約10カ月とあります。

淡路瓦でオカリナ いい音色
南あわじ・友地裕さん
軽くて丈夫、10カ月待ちの人気

 「オカリナ島プロジェクト」。南あわじ市倭文委文の友地裕ともちひろしさん(39)が半年前から、こんなツイッターアカウントで発信を続けている。自宅兼工房で、地場産業「淡路瓦」の粘土を使ってオカリナを製作、販売している。「僕が知る限り、いぶし瓦のオカリナはよそにはない」と話す。
 オカリナとの出合いは2015年だった。友人の演奏を聞いた。手のひら大の陶器から奏でられる優しい音色に心が洗われた。
 その形も気になった。しげしげと眺め、「生まれ育った淡路島に似ている。瓦用の土で作れるのではないか」と着想した。我流で始めた。吹き口の位置、指で押さえて音階を出す穴の大きさ…。一つ一つ工夫した。
 淡路瓦のメーカーに、粘土の供給と、焼き上げを頼んだ。屋根の上に載せるための素材だけに通常のオカリナより軽く、水や汚れに強いという。
 17年、愛好家が全国から宍粟市に集う「森の国オカリナフェスティバル」に持ち込んだ。鈍く光る見た目は、楽器が持つイメージとのギャップが大きく、演奏家らから懐疑的な反応もあった。
 手にとってもらうと、「想像より軽い」「重厚な音も出せる」と評判に。2万円弱から4万円弱で販売し、注文から発送まで約10カ月待ちになった。
 新型コロナウイルスのため、自宅で過ごす時間が増え、趣味のオカリナが静かなブームという。
 ツイッターでは「3人寄ればまんじゅうと笛」「腹が減ってはオカリナ吹けぬ」―。クスッと笑える言葉と、イラストを投稿する。
 新製品も企画している。淡路島が登場する神話にちなんだ「国生みのオカリナ」は、押さえにくい穴をなくして初心者も演奏しやすくする。
 また、地元特産のタマネギをかたどり、ネコの顔の模様をつけた「おにゃおん」も考えた。縦横5センチと小さく、プレゼント用として地元の神社で販売予定だ。
 製作を希望する人への指導もするといい、「オカリナを広めることで、瓦産業のPRにも貢献できれば。コロナ禍が収まったら演奏会などをして地元を盛り上げたい」と話している。

2021年9月21日夕刊より

見た目も渋く、心地よい音色が響きそうですね。

ちょっと本筋からそれますが、記事にある住所の「倭文」をどう読みましたか。正しく読めたとしたらかなりの淡路通です。もちろん「わぶん」ではありません。
兵庫県内の難読地名を扱ったこちらの投稿もぜひご覧ください。

続いては納品まで約1年の文具です。
父親世代からは子ども時代の必需アイテムだったと聞きますが、手にした子どもを見掛けることはありません。それなのになぜ?
購入者を知れば、納得します。

肥後守(三木市) 永尾かね駒製作所
携帯ナイフ 納品1年待ち

 鉛筆を削り、果物の皮をむき、竹とんぼを細工し―。かつてあまねく国民が手にした折り畳み式ナイフ「肥後守ひごのかみ」は、三木市の永尾かね駒製作所が1軒で作り続けています。海外で人気とのことで、納品まで約1年待ちだそうです。
 同社は1894(明治27)年の創業。肥後守は当時、金物問屋が三木に持ち帰った小刀を、周辺の職人らが携帯しやすいよう折り畳み式に改良して全国区の支持を得た。とりわけ人気のあった九州にちなんで、商標を登録したという。
 1960年代以降、刃物追放運動が広がり、電動鉛筆削りやカッターが普及、需要は激減した。三木だけで約40軒あったメーカーも廃業が相次ぎ、同社を除いて消えた。
 5代目永尾光雄さん(54)は2010年、周囲の勧めで父の後を継ぐと決めた。何年も売れなかったが、つちでたたいて強度と切れ味を高める「鍛造」の技術を磨くと、欧米を中心に売り上げは急増し、海外比率は半数以上に膨らんだ。
 近年は、アウトドアブランドとのコラボにも取り組む。工程はものによって約30に上るが、手間を惜しまない。受け継いだ「安くて、切れて、みんなが持てる」の理念を貫く。

2020年7月24日付朝刊より

日本の伝統の技に引かれる海外の人が多いということですね。
アウトドア人気もあって、注文はさらに増えているでしょう。

次も納品に1年程度かかるようです。
「ファイブ、フォー、スリー、ツー…」
あの特撮人形劇の精巧なレプリカを手掛ける作家が神戸にいます。

超精巧「サンダーバード」
〝公式〟造形作家、神戸の坂本さん
登場人物を制作、1体30万円

 放映55周年を迎えた人形劇「サンダーバード」に登場するパイロット、スコットとバージルの精巧なレプリカを、英国の放送局から製造許諾を得ている国内唯一の造形作家、坂本健二さん(62)=神戸市兵庫区松本通4=が17年ぶりに発売した。手足はもちろん目や唇も動き、表情なども「最高傑作」と胸を張るこの人形。公式商品の扱いで、1体30万円(税別)もするが既に6体の注文が入ったという。
 坂本さんは商社経営などの合間に人形制作を始め、2002年にスコットを75体発売して本格デビュー。企業からCM動画用のサンダーバード人形の依頼を受けるなど国内随一の作家と評価されている。これまで展示用なども含めて百数十体手がけたが、還暦を迎えて視力や気力が落ちる前に最高傑作を作ろうと、販売用の作品に取り組んだ。
 放送局のチェックを受け、許諾を得るまで2年。さらに1年かけて人形が自立できるよう関節などに改良を加えた。完成した型枠から部品を作り、1体仕上げるごとに1カ月かかるという。
 坂本さんは「これで文句を言われたら泣くしかない。世界一の完成度」と胸を張る。各15体限定。受注生産のため納品には1年程度かかる場合もある。

2021年4月1日付夕刊より

これほど精巧に再現されるなら納品まで1年かかると聞いても驚きません。

極めつけはこちらです。手にするまでに27年。
しかも、ものはコロッケです。
食べ盛りの小学生の子どものために奮発して注文しても、届くのはその子が中年になったころです。
背景を記者が調べました。

27年待ち 幻のコロッケ
高砂の精肉店1個540円でも注文殺到
厳選イモに、最高級神戸ビーフがゴロゴロ
感動呼ぶ「食べたことがない味」

 高砂市の精肉店が販売する神戸ビーフコロッケの予約待ちの期間が、27年にまで延びている。素材を厳選し、赤字覚悟で手作りするため、1日200個以上は手掛けない。だが、テレビ番組で取り上げられたり、芸能人が紹介してインターネット上で拡散されたりするたび全国から注文が殺到する。話題が先行する一方で、コロッケには店主の神戸ビーフに対する情熱が秘められている。
 創業大正15(1926)年の精肉店「旭屋」(同市伊保港町1)が、インターネットで限定販売する「極み」。肉は最高級A5ランクの3歳雌牛だけを使い、食べ応えのあるサイコロ状にカットする。ジャガイモは、同市内の農家に種芋を持ち込んで栽培を依頼する「レッドアンデス」。その糖度の高さが、脂が乗った肉のうま味を引き立てる。
 ジャガイモはふかしたままを使うため水分が多く、神戸ビーフも独特の軟らかさがある。つぶれないよう1個ずつ人の手で丁寧に成形し、一晩寝かせてからパン粉を付ける。商品は油で揚げる前の冷凍の状態で発送する。
 1個540円だが、肉の材料費だけでも600円程度かかる。おのずと生産量は限られ、店主の新田滋さん(57)は「売れば売るほど赤字」と明かす。
 2000年ごろに販売を始めた当初から人気は上がり続け、16年に13~14年待ちになった。いったん中止したが、復活を望む声に押されて再開。その際、値上げしたが、神戸ビーフの価格が高騰し、赤字幅は広がる一方だという。
 それでも続けるのは「神戸ビーフを少しでも多くの人に味わってほしい」との思いから。高級なすき焼き用などは手が出なくても、手頃なコロッケなら求めやすい。おいしさを体験し、別の商品の注文につながれば、肉本来の魅力を知ってもらえると考える。
 今年作っているのはおおむね7~8年前の注文分。4月に20個を受け取った高砂市内の女性(54)は「発送を知らせるメールで注文を思い出した。ゴロゴロとした肉が入っていて、ソースも付けずに食べられた。今まで食べたことがない味」と家族らで堪能した。
 「注文自体を忘れていた」というのは典型的な声。「山ちゃん」こと、お笑いコンビ南海キャンディーズの山里亮太さんも同様だったという。9月に出演したラジオ番組で、10年ほど前に注文したコロッケを妻の女優蒼井優さんと味わった感動と、人気の高さに驚いた経験を紹介。芸能人の発信力はすさまじく、すぐにネット上で話題になり、全国から注文が集まった。
 これまで「幻のコロッケ」としてテレビやネットで話題になるたびに、届くまでの年数が長くなった。その傾向に拍車が掛かり、今年に入ってからさらに約7年延びた。新田さんは「今注文を受けても、届くころには多分、僕は生きていないかも」と笑う。
 コロッケを呼び水としてネット通販に力を入れるのにはもう一つ理由がある。「顔が分かる人からしか仕入れない」という生産者への思いだ。
 新田さんは畜産農家に通って関係を築き、競りで直接、1頭丸ごと仕入れる。各地の百貨店などの催事に参加すると、初めて会った客にも「いつも通販で買っている」と声を掛けられ、肉の味や食感へと話題が広がる。消費者の舌の反応は直接農家に伝える。「少しでも消費者寄りの牛を育ててほしい」と願う。
 新田さんの「うまい肉」を届けたいというこだわりは、肉汁のごとくあふれ出る。

2021年12月21日付夕刊より

「売れば売るほど赤字」にもかかわらず、時間をかけて予約に応える。神戸ビーフコロッケに対する店主の思い入れが記事にはにじみます。
とはいえ27年です。「幻」という表現は誇張ではないでしょう。

念のために触れておきますが、今回取り上げた商品はいずれも紙面掲載時の「待ち期間」です。魅力ある品ばかりなので、期間はさらに伸びているかもしれません。

<播州人3号>
1997年入社。取り上げた記事では作り手だけでなく、楽しみにして待つ購入者側の情熱も感じられます。何時間並んででもうまいものを食べたいという食通の心理と同じでしょうか。行列のできるA店よりも、味が落ちてもすいているB店を選ぶせっかちな性格なので、その境地にはなかなか達せられません。

#待ち時間 #オカリナ #肥後守 #サンダーバード #幻のコロッケ #神戸ビーフ