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PCR、SDGs、NOx、RCEP…。読み方も分かります?! アルファベットの組み合わせ

新聞には略語が多く登場します。「道交法(道路交通法)」や「外為法(外国為替および外国貿易法)」などの短縮した形のほか、IT(情報技術、Information Technology)やAI(人工知能 Artificial Intelligence)などアルファベット略語があります。いずれも限られた紙面を有効に使い、見出しで簡潔に伝えるためです。紙面でよく見かけるアルファベットの組み合わせ略語を播州人3号が紹介します。

略語を紙面で使うときは、最初の登場時には「全表記(略語)」を掲載し、2回目以降や見出しには略語とします。

ただし例外もあります。この言葉がそうです。
一時は紙面に載ってない日がなかったのではないでしょうか。
「PCR(ピー・シー・ア-ル)」です。
調べてみると、2021年は約1000件、20年は約1500件、記事や見出しに使われていました。

新型コロナをきっかけに使用されだしたと思っていましたが、実は10年以上前にも頻繁に使われた時期がありました。

神戸の新型インフル
初確認前に拡大か
4月末 「季節性」異例の急増

 神戸市内の定点医療機関を受診し、インフルエンザと診断された患者数(4月27日~5月3日)が、前の週と比べ約2倍に増えていたことが、同市の調べで分かった。例年、季節性インフルエンザの終盤期は、週ごとに患者数は減っていくが、増加に転じるのは珍しいという。神戸市内の新型インフルエンザ感染者93人(21日午前9時現在)の調査では、5月10日が最も早い発症時期とみられているが、その1~2週間前から既に新型が拡大していた可能性も出てきた。
 同市は市医師会と協力して全9区の48医療機関で、インフルエンザの定点観測をしている。
 季節性インフルエンザの終盤期は、週ごとに患者数が減るのが通常。しかし、今年は終盤期に入った4月20~26日に15人だった患者数が、翌週の27日~5月3日には29人と倍増した。
 中でも北区が9人と最多。今回の新型感染者も北区在住者が93人中32人(34%)と際立って多い。また、市によると、インフルエンザ終盤期は簡易検査でB型陽性と判定されるケースが90%以上を占めるとされるが、今年は例年に比べA型が目立つという。
 定点観測で行うのは簡易検査のみで、詳細(PCR)検査はしない。そのため新型インフルエンザとは断定できないが、同市は「既にこの時期に新型を発症している患者がいた可能性は否定できない」としている。

(2009年5月21日夕刊より)

「新型インフルエンザ」でした。
当時は「PCRというウイルスの詳細検査」や「患者から採取したウイルスを遺伝子レベルで調べるPCR検査」など説明付きで使われまていました。

この春、紙面での略語の使用にちょっとした変化がありました。
気付かれた方はかなりの新聞通です。
ヒントは銀行などに置かれた「ATM(エー・ティー・エム)」です。

架空請求詐欺
50万円の被害
姫路の81歳男性

 28日午後、姫路市の男性(81)が「インターネット料金が未納と言われ、現金約50万円をだまし取られた」と姫路署に届け出た。同署が詐欺事件として調べている。
 同署によると、同日午後1時ごろ、男性宅に金融会社社員を名乗る男から電話があり「ネット料金が未納になっている」「未納分を支払わないと財産を差し押さえる。裁判所に告訴する」などと告げられた。男性は男の指示に従い、市内の商業施設内のATMから同3時すぎに振り込んだ。

(2022年4月30日付朝刊より)

これまでの書き方は原則通り最初に「現金自動預払機(ATM)」とし、2度目以降は「ATM」を使っていましたが、初出から「ATM」が使えるようになりました(そもそも「現金自動預払機」を使う人がいないとい思いますが…)。

神戸新聞が使う略語については共同通信社発行の「記者ハンドブック 新聞用字用語集」を基に判断してます。
記者やデスクはこのハンドブックを手元に置いて原稿を書いたり、チェックしたりします。
この春6年ぶりの改訂があり、略語の使い方が少し変わりました。

ツイッターやフェイスブックなどの「SNS」も毎日のように紙面に登場する言葉ですが、こちらは「交流サイト(SNS)」が正式な使用法になりました。
これまでは「会員制交流サイト(SNS)」と表記していましたが、「交流サイト(SNS)」と、ちょっと身軽になりました。

こちらの略語も紙面登場回数が急上昇しています。

SDGs取り組み
明石市が助成
100万円上限に経費全額
市内団体の申請受け付け

 明石市は、持続可能な開発目標(SDGs)に関する市内団体の取り組みを後押しするため、助成金の申請を受け付けている。100万円を上限に事業経費を全額助成する。申請期間は6月30日まで。SDGsは「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」など17項目からなる。
 向こう9年間にわたる「あかしSDGs推進計画(第6次長期総合計画)」を始めたタイミングに合わせて、事業者や市民団体と連携して地域課題を解決するため、助成金を設けた。
 経済や社会、環境などに効果を生んだり、新事業または既存事業に新たな視点が加わったりしていることが要件。例として、豊かな海づくり▽外来生物による農業被害の防止▽食品ロス削減▽事業系ごみ削減と商品開発―などを挙げている。

(2022年4月14日付朝刊より)

「SDGs」です。「持続可能な開発目標(SDGs)」と使います。
読み方に注意が必要です。「エス・ディー・ジーズ」が正解で、「エス・ディー・ジー・エス」ではありません。

紙面や電子版「神戸新聞NEXT」には文字を載せるので、テレビ原稿のように読み方はそれほど気にしませんが、音声コンテンツ「めっちゃ兵庫」などでは読み方の確認も必要です。

翌日朝刊の扱いなどを検討する編集局の会議では、各デスクが担当する原稿について説明しますが、その場になって読み方が怪しくなるときがあります。

「RCEP」がそうでした。「地域的な包括経済連携」の略語です。
そのまま読めば「アール・シー・イー・ピー」ですが、正解は「アールセップ」です。
「NOx(窒素酸化物)」は「ノックス」と読むのに、「NGO(非政府組織)」は「エヌゴー」ではなく「エヌ・ジー・オー」となるなど複雑です。

紙面に登場するアルファベット略語の中には、特例的に最初から日本語表記なしに使用できるものもあります。
DNA、FM、IT、NPO、Wi-Fiなどがそうです。
この春のハンドブック改訂では、初登場ながら、初回略語使用可の特例となったのが先ほどの「PCR(検査)」と「SIM(カード)」でした。

その判断基準は?と尋ねられると答えにくいのですが、「たいていの人が見て分かるかどうか」ということでしょうか。

<播州人3号>
1997年入社。職場に各部員の予定を書き込む白板があります。先日、ある同僚の夕方の訪問先の後に「NR」と記されており、見慣れぬ略語の意味についてほかのメンバーが頭をひねっていました。正解は「ノー・リターン」。出先から会社に戻らないという意味でした。書いた同僚によると「『直帰』は画数が多いため」。今では職場共通の略語になっています。

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