栗花落、釈氏、一番合戦、泥…。地名だけじゃない、難読名字の数々
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栗花落、釈氏、一番合戦、泥…。地名だけじゃない、難読名字の数々

どうもこんにちは、シャープです。

先日、兵庫県内の難読地名を取り上げた記事をアップしたところ、思いのほか、多くの方々の目に留まったようです。

そこで今回は、シリーズ第2弾ということで、神戸新聞紙面に登場した難読名字にスポットを当てたいと思います。

まずは、日本政治外交史が専門で、防災にも深く携わる有識者の名字です。

◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

① 五百旗頭


五百旗頭

神戸大法学部教授などをへて、現在は兵庫県立大理事長を務める五百旗頭真さん(西宮市出身)の名字です。神戸新聞の紙面にたびたび登場し、現在も文化面で「五百旗頭真の未来をつむぐ歴史 兵庫・日本・世界」を連載中。読者にもなじみ深い名字かもしれませんが、初見で「いおきべ」と読める人はそういないでしょう。

五百旗頭真さんで思い出すのが、2012年の神戸マラソンです。

私は、ゴール地点で完走者に感想を聞く担当だったのですが、一般ランナーのリストをチェックしていた同僚の記者がざわついています。何事か尋ねると、「五百旗頭真」という名前がエントリーされているというのです。

「マラソンが趣味だったっけ?」

「むしろ、ゲストランナーになりそうなもんやけど…」

あれこれ推論しながら、ゼッケンを頼りに「五百旗頭真」さんを待ち構えていると……、似ても似つかない男性がゴールに駆け込んできました。さっそく、同僚が話を聞きに行き、戻ってくるや開口一番、「同姓同名の別人でした」

五百旗頭さんが出てくる記事を見るたびに、私はこのエピソードが頭をよぎります。

さて、ここでは、五百旗頭さんが文化功労者に選ばれたときの記事を紹介しましょう。

 「戦後の日本とは、何か」。政治外交史の研究を通じ、真摯(しんし)に問い続けた。歴代首相の相談役も務めた第一人者は、文化功労者への選出を「思いもかけない評価で光栄」と喜んだ。
 西宮市出身で、京都大大学院を修了。占領期の日米関係や主権回復の過程などに焦点を当てた。米国の外交文書を読み込み、関係者の聞き取りを重ねる実証的な手法を貫いた。
 1981年から神戸大教授を務め、四半世紀の任期で数々の賞を受けた。「自国で完結しない視野の広さが良好な国際関係の基盤」との信念から、ゼミ生に外国の大学生との討論を課し、優れた研究者を育てた。
 阪神・淡路大震災を機に防災と復興分野にも取り組んだ。「阪神・淡路は戦後の平和の終わりを告げた。天災への対応力が社会に必要だ」と強調。東日本大震災の復興構想会議議長としても、減災の理念などを提言した。
 「大自然の奇襲に謙虚に備え絆を保つため、神戸の教訓を発信したい」と、歴史家の使命感に燃える。

(2011年10月25日付夕刊より)

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

② 栗花落


鬼滅

人気漫画「鬼滅の刃」で、登場人物の姓に使われて脚光を浴びましたが、小鳥遊(たかなし)、月見里(やまなし)などと並ぶ難読名字の代表格として、古くから知られていました。神戸発祥の名字で、本家筋は「つゆ」、分家筋は「つゆり」と読みます。

由来については、2020年11月28日付の夕刊で詳しく紹介されています。

 公開中の映画が好調な漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」。作品の特徴の一つが、竈門(かまど)や栗花落(つゆり)、胡蝶(こちょう)、不死川(しなずがわ)など登場人物の個性的な名字だ。その一部は、少ないながらも実在する。期せずして脚光を浴びた名字の持ち主は、空前のブームをどう見ているのだろうか。
 「自分の名字が人気作に使われるなんて、思ってもいなくて。取りあえず、悪役じゃなくてよかったなと」。神戸市北区の主婦、産屋敷(うぶやしき)美江子さん(61)が笑う。
 鬼滅の刃は、大正時代を舞台に、主人公竈門炭治郎が、鬼になった妹を人間に戻すために戦いを重ねるストーリー。その中で主人公らが加わる「鬼殺隊」の当主に「産屋敷」姓が採用されている。
 美江子さんによると、出産のための「産屋」があったとされる三重県紀宝町の地名が由来。昨年末、何げなくインターネットで名字を検索したところ、鬼滅の刃の関連項目がずらりと出てきて気付いたという。
 早速漫画を買いそろえ、長女真美さん(34)とともに世界観のとりこになった。病院などで名前を呼ばれて視線を集めることも増えたといい、「知名度がアップしたようで、誇らしい感じがしています」と話す。
 作品には、神戸市北区山田町が発祥とされる難読名字の「栗花落(つゆり)」も出てくる。竃門炭治郎の同期に当たる鬼殺隊の女剣士、栗花落カナヲだ。
 同市灘区の栗花落敏彦さん(73)は「『らっかせいさん』と呼ばれるなど、初見できちんと読まれたことはまずありませんが、奈良時代までさかのぼる名前なんですよ」と解説する。
 敏彦さんが知る伝承の一つによれば、淳仁天皇に仕えていた地元の役人、山田左衛門尉真勝が白滝姫に恋をし、歌比べに勝って結ばれた。その時期が、栗の花が落ちる梅雨入りの頃だったことから天皇が新しい名字として与えたという。山田町には、夫婦にちなんだエピソードが残る井戸「栗花落(つゆ)の井」が現存し、これを姓の由来とする説もある。
 敏彦さんによると、同じ「栗花落」姓でも、本家筋は「つゆ」と読み、敏彦さんら分家筋は「つゆり」と読むそうだ。
 「鬼滅の刃にどうこう言うつもりはありませんが、『漫画に出てくる名前』として認識されるのはちょっと…。1300年の歴史をへて、今に伝わる由緒をきちんと分かってほしい」
 主人公と同じ「竈門」姓の女性(77)も、播磨地域にいる。今春、テレビ局からの問い合わせをきっかけに作品を知ったが、関心は高まらなかったという。
 内容を確認しようと書店に立ち寄ってみたものの立ち読みはできず、「買うほどではない」と断念。アニメの再放送も、途中で見るのをやめた。「この年齢になって、今更名前が注目されてもね。そっとしておいてほしいというのが本音です」と苦笑する。
 ユニークな登場人物の名字について、単行本を出版する集英社広報部は「架空の世界を舞台とした漫画では、身近な名前を使わないのが一般的」と説明。個別の名字を選んだ経緯については「創作の秘密に関わる事項は回答していない」とした。

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③ 釈氏


釈氏

昨秋、運動面に目を通していて、思わず二度見してしまった名字です。記事の本文だけではなく、見出しにもフリガナが付いていました。紙面を組む担当者が、それほどまでに読みづらいと判断したのだと思いますが、皆さんは分かりますか。

正解は「きくち」です。

「釈氏=きくち」と分かったところで、「なるほど、そうだったのか」とは全くなりません。わき上がる疑問をぬぐいきれず、記事を執筆した記者に由来を聞いたところ、「確か、仏教系の名字だったような……」。

明治時代に入って名字の使用が認められた際、仏教界では、経典などから採用したユニークな新姓が数多く生まれており、その一つなのかもしれません。

ちなみに、記事に登場した釈氏さんは、新体操の選手です。

 新体操の兵庫県高校新人大会を兼ねて行われた県総体代替大会で、フレッシュな後輩たちに交じり、特別な思いで舞う選手がいた。男子個人に3年生で唯一出場した釈氏乗真(きくち・じょうしん、尼崎西)。コロナ禍で春と夏の全国大会が中止になり、逆境の中で周囲の支えの大きさを知った。「試合に出れば出るだけうまくなれる。次につながる演技を」。笑顔で3年間を締めくくった元主将は、大学でも感謝を胸に競技を続ける。
 体のラインを生かしたしなやかな演技力を武器に、昨年の県新人大会男子個人総合で優勝するなど県内では上位の常連。チームを束ね、昨年の県総体で団体4連覇を果たした一つ上の絶対的エース岩渕緒久斗が引退後、若いチームをけん引してきた。他に3年生はおらず「しんどい部分もあった。だからこそ、OBや周囲の期待をはるかに上回る団体(演技)をしたいと思ってきた」。集大成の今年に懸ける思いは人一倍強かった。
 部活動休止期間は、自宅の寺で個人練習を重ねた。全国トップレベルの選手の動画を見てイメージを膨らませるうちに理想が高くなり、学校での練習再開直後は体力の衰えに焦った。「やっぱりか」。今春神戸で開催予定だった全国選抜大会に続き、5月に夏の全国総体(インターハイ)中止も決まり、落ち込んだ。
 そんな時、周囲の存在に支えられた。岩渕からは大会中止決定直後に無料通信アプリLINE(ライン)で励ましの言葉が届いた。新体操界ではオンラインでの大会など代替大会開催の輪が広がり、運営に携わる関係者や、家族のありがたさを実感した。
 県総体代替大会では男子個人総合で2位だった。クラブを投げて体をひねりながら回転する難度の高い技に試合で初挑戦し成功。収穫の一方、減点につながるミスが出るなど課題も見えた。
 実力を発揮する公式戦がない中、演技の映像を送った縁で、高校卒業後は東北の強豪大学に進むことが決まっている。「置かれた環境のせいにしない。人のせいにする前に、自分の実力を疑う。これは『尼西』で学んだことです」。目標は、東京ディズニーランドで来園者に夢を与えるダンサーになること。胸を張って、次のステージに進む。

(2020年11月19日付運動面より)

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

いかがだったでしょうか。

このほかにも、一番合戦(いちばんがせ)泥(なずみ)黒厚子(くろごうし)岨下(そわした)波々伯部(ははかべ)忍海辺(おしんべ)弘原海(わだづみ)など、一見しただけではなかなか読めない姓が紙面に登場しています。

こういった名字は、地名や伝承と密接に関わっていることが多いため、取材で出会ったときは、本題そっちのけで、名字のことばかり尋ねてしまうこともあります。


<シャープ>2006年入社。日本全国、どの地域にもほどほどに存在する地形由来の名字であるため、出自をたどることはほぼ不可能。由緒を語ることができる難読名字にあこがれる一方、平凡さを逆手にとった(?)記事を書いたことも。これまでに出合った最高難度の名字は、高校時代の知人の「御菩薩池(みぞろげ)」


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うれしいです。姫路・網干の秋祭りの様子です(2019)
兵庫県の地方紙「神戸新聞」です。過去記事の中から、記者らがテーマごとに独自の視点で選び、背景や取材の裏話などとともに紹介します。ゆかりの有名人の逸話や、ほっこりする地域の話題など兵庫の魅力を、毎週水曜正午と土曜午後6時に投稿します。「おもろい」と思われた方、ぜひフォローください