見出し画像

ロープウエー行き交う街、神戸

神戸でよく目にするものの一つにロープウエーがあります。都市部に近い山上に観光施設が多いからでしょうか。六甲山系に複数の路線があり、車窓にはそれぞれ異なる眺望が広がります。そんな神戸のロープウエーを播州人3号が紹介します。

まずは神戸布引ロープウェイです。山陽新幹線「新神戸駅」近くから布引ハーブ園までの約1・5キロを結びます。高低差は330メートル。車窓から神戸の街並みが一望できます。

 「新神戸ロープウェー」として親しまれてきましたが、2010年、布引ハーブ園とともに神戸市の外郭団体から民間会社に事業譲渡され、リニューアルを機に名称も変更されました。

 現在のゴンドラはスイス製で、視界が広く、眼下に布引の滝や神戸の市街地が広がります。バリアフリーを重視し、乗降口に板を付けてホームとの段差をなくしたほか、座席を上げれば車いすでも乗車できる、と過去記事にありました。

新神戸から東に行くと、摩耶|《まや》ロープウェーがあります。

この摩耶ロープウェーと摩耶ケーブルを合わせて「まやビューライン」と呼ばれ、神戸市灘区の市街地と摩耶山を結びます。

摩耶ケーブルは1925(大正14)年、摩耶ロープウェーは1955(昭和30)年の創業です。

摩耶ケーブルから摩耶ロープウェーに乗り換える「虹の駅」近くには「旧摩耶観光ホテル」があります。
「廃墟の女王」とも呼ばれ、国の登録有形文化財に指定されています。
ホテルの敷地内は立ち入り禁止ですが、ロープウエーや駅横の展望台から全景を一望できるため、「虹の駅」に「旧摩耶観光ホテル前」という副駅名が加えられています。

 神戸市によると、同ホテルは1930(昭和5)年、摩耶鋼索鉄道(現在の摩耶ケーブル線)の福利厚生施設として建設。戦後売却され、「摩耶観光ホテル」として営業しましたが、67年に営業を停止。93年に建物が閉鎖された後は阪神・淡路大震災や台風の被害も重なり、廃虚と化したようです。

摩耶山からの夜景などを紹介する投稿はこちら

さらに北東へ行くと、六甲山上と有馬温泉とを結ぶ「六甲有馬ロープウェー」があります。

3代目ゴンドラ始動
六甲有馬ロープウェー

 六甲山頂と有馬温泉を結ぶ六甲有馬ロープウェーの3代目ゴンドラがデビューするのを前に、有馬温泉駅(神戸市北区有馬町)で19日、記念式典が催された。展望シートを供えた赤と銀色の新ゴンドラは、20日午前9時半から運行する。
 六甲有馬ロープウェーは1970年に開業し、2代目ゴンドラは1993年に導入。開業50周年に合わせて、更新を決めた。
 新ゴンドラはスイス製で、色彩は六甲山の紅葉と、空中散歩のスリル感をイメージ。大きなガラス面により、眼下の自然をより雄大に感じられるという。同駅舎内も改修され、黒を基調としたシックなデザインになった。
 式典には、久元喜造神戸市長や在大阪スイス名誉総領事らが出席。久元市長は「新しいロープウエーは有馬・六甲に観光客を呼び込む大きな契機になる」などとあいさつし、試乗を楽しんだ。
 運営する神戸すまいまちづくり公社の寺沢正敏プロモーションリーダー(41)は「今まで以上に景色を楽しめるようになったので、一度乗りにきてほしい」と話していた。

(2020年3月20日付朝刊より)

六甲有馬ロープウェーにはかつて表六甲線があり、同線が2004年に休止されるまでは日本最長の長さを誇っていました。

六甲有馬ロープウェー
大パノラマ見納め
一部休止 名物がまたひとつ…

 日本最長として知られる六甲有馬ロープウェーの一部区間が18日、休止される。神戸はもちろん大阪市街、和歌山、淡路島、四国方面までもが見渡せるパノラマビューイングも見納めになる。
 運転を取りやめるのは、全長約5キロのうち「表六甲線」の表六甲駅―天狗岩駅―六甲山頂カンツリー駅の約2・3キロ。1970年に運行が始まり、計1300万人が利用した。74年には、50万人以上が空中散歩を楽しんだ。
 しかし、マイカーの普及などから、ここ数年の利用客はピーク時の半分に。度重なる台風に襲われた今年は、平年の8割へとさらに落ち込んだ。
 開業時からロープウエーに携わってきた六甲山頂カンツリー駅の駅長は「最近は紅葉見物が多いが昔は夏のお客さんの方が多かった。虫捕りかごを持った子どもがたくさん乗ってくれたのだが」と寂しそう。

(2004年12月12日付朝刊より)

運行は止まっていますが、支柱などは残ったままです。
神戸有数の観光地でもあり、景観上から疑問の声が寄せられます。

17年前に運行停止 六甲有馬「表六甲線」
ロープウエー跡 鉄塔無残
国立公園内、廃止なら原状回復義務
「休止扱い」撤去費用回避

 四季折々の風情と、大阪湾を見下ろす眺望が楽しめる六甲山頂の一帯。だが、そのすぐ脇では、17年前から動いていないロープウエーのさびた鉄塔やロープが異様な存在感を放つ。この光景に、神戸市西区の会社員男性(59)から「廃虚と化しつつあり、景観を害している。いつ撤去されるのか」との声が神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に寄せられた。取材すると、そもそもロープウエーは廃止されていなかった。その事情とは―。
 新型コロナウイルス禍で人混みを避けるため、六甲山に行く機会が増えたという男性は「標高は約930メートルだが、全国に自慢できる市民憩いの山と再認識した」と絶賛。一方で、ロープウエー跡を「印象が悪くなるのでは、といささか胸が痛みます」と残念がる。
 全長約5キロの六甲有馬ロープウェーは、1970年に開業。山上駅(現・六甲山上駅)から天狗岩駅を通り、山頂のカンツリー駅(現・六甲山頂駅)をつなぐ「表六甲線」と、同駅から有馬駅をつなぐ「有馬線」があった。有馬温泉の利用客や登山客からの人気を集め、93年4月には乗客延べ1千万人を突破した。
 しかし、阪神・淡路大震災の影響を受け、客足は徐々に減少。99年に新しいゴンドラを導入するなどで策を練ったが、表六甲線が2004年12月に営業休止となった。現在は有馬線のみ運行する。
 表六甲線は、高さ約10~40メートルの鉄の支柱5本と、支柱をつなぐロープが約2・3キロにわたって設置されたままに。中間の天狗岩駅も木々に覆われつつある。
 支柱の一つは六甲ガーデンテラス(同市灘区六甲山町)に隣接し、展望台「六甲枝垂しだれ」から海を見ようとすると、必ず目に入る。スタッフは「『あれ(支柱)邪魔やな』という声はよく聞きます」とこぼす。
     ◇
 ロープウエーを所管する市外郭団体「神戸すまいまちづくり公社」を取材した。担当者は「上部だけでも撤去すると、事業をやめたことになるので…」と言いにくそうに答えてくれた。どういうことか。
 表六甲線はあくまで「休止」。国立公園の中にあるため、廃止すると自然の状態に戻す必要がある。部品一つ残さず、支柱の基礎から取り除かなくてはならないが、作業は「土砂崩れの危険性があるのと、莫大ばくだいな費用がかかる」という。
 だから、運行停止17年後も「休止」の体を取って、安全を確保して現状維持を続けている。ちなみに「再開のハードルは非常に高い」という。
 「六甲観光の表通りに、無残な姿をさらしているのは神戸市民として悲しい」とする男性の思いを伝えると、担当者は「いつまでもこのままというわけにはいかない。処分するか売却するか、検討はしていかないといけない」と話した。

(2021年6月3日夕刊より)

棚上げされたような状態ですが、「休止」とした背景には、何とか再開したいという望みも込められていたのではないでしょうか。

今回、投稿をまとめるため、古い資料を探していると、こんなはがきが出てきました。

神戸市の西部にもロープウエーがあります。
神戸市須磨区の須磨浦ロープウェイです。

新生ロープウエー 乗り心地いかが?
須磨浦山上遊園 5カ月ぶり運行再開

 改修のため運休していた神戸市須磨区の「須磨浦ロープウェイ」が25日、運行を再開した。訪れた乗客らは約5カ月ぶりの空の旅を満喫した。
 須磨浦ロープウェイは1957年から運行。ゴンドラ2台を備え、山陽電鉄須磨浦公園駅と須磨浦山上遊園間(約460メートル、高低差約180メートル)を約3分で結ぶ。昨年11月から制御装置の自動化などのために運行を休止し、リニューアル工事をしてきた。
 25日は雨天にもかかわらず、乗り場には運行前から親子連れらが並んだ。再開を記念し、子ども服メーカーのファミリア(同市中央区)が協力し、同社キャラクターのステッカーなどが貼られたゴンドラ内で乗客が景色を眺めたり、写真を撮ったりして楽しんだ。
 最初の便の乗客は「海が目の前に広がる景色が忘れられず、再開を待っていた。また天気のいい日に来たい」と笑顔だった。

(2021年3月25日夕刊より)

改修前の2020年まで全国でも珍しい手動式の制御装置を使用していました。
こちらはケーブルではなく、「カーレーター」と呼ばれる不思議な乗り物につなぎます。

「乗り心地の悪さ」が特徴の一つです。

カーレーター 愛され50歳
須磨浦名物 山上へガタゴト…
昭和風情 乗り心地「悪さ」PR

 神戸市須磨区の須磨浦山上遊園で入園客を山頂に運ぶ乗り物「カーレーター」が18日、開通50周年を迎えた。「国内唯一の乗り物」をうたうだけでなく、最近はガタゴトと揺れる「乗り心地の悪さ」もPR材料に。入園客は最盛期から減ったが、カーレーターを前面に出した集客作戦を始めた。
 カーレーターは、山陽電車須磨浦公園駅発着のロープウエー鉢伏山上駅(標高約210メートル)と、回転展望閣のある山頂(同246メートル)との間の急坂91メートルを2分20秒で結ぶ。
 乗り場には「激しい振動で不快感を覚える場合があります」との注意書きがある。出発と到着の際に大きく揺れ、途中は「イモムシに乗った感じを楽しんで」(同遊園ホームページ)と少し収まる。
 カーレーターは車の「カー」とエスカレーターの「レーター」を組み合わせた造語。ベルトコンベヤーの上に「搬器はんき」と呼ばれる2人乗りのかごを載せただけの構造だ。
 坂道を雨天でも楽に移動してもらうため、1966(昭和41)年3月に開通。ベルトコンベヤーメーカーの日本コンベヤ(大阪府)が開発したばかりで、遊園地らしい輸送方法が魅力だったという。前年に導入した大津市のスキー場サンケイバレイ(現びわ湖バレイ)に続く2例目だった。
 びわ湖バレイは75年に廃止。同遊園も2010年ごろ、ケーブルカーやエスカレーターへの転換を検討した。ところが「乗り心地の悪さ」が評判を呼び、カーレーター目当てに遠方から訪れる客が出始めたこともあり、国内で唯一、生き残った。

(2016年3月18日夕刊より)

カーレーターを降りれば、そこには展望台があります。360度自動で回転し、淡路島や明石海峡大橋、神戸空港など海や山、街の眺望を次々に楽しめます。

兵庫県内のレトロな回転喫茶を集めた投稿はこちら

新たなロープウエーの整備も検討されています。
勾配のある山ではなく、平地の港に、です。

神戸港ロープウエー構想 
新港突堤西~ハーバーランド
市、21年度調査
都市型で国内最長1.2キロ視野

 神戸市が神戸港一帯の回遊性を高めるため、ウオーターフロント再開発事業で、国内最長を見込む海上ロープウエーの整備を検討していることが同市への取材で分かった。三宮の南にある新港突堤西地区と神戸メリケンパークのある中突堤、神戸ハーバーランドを結ぶルートを構想し、2021年度に調査を計画。実現すれば、海上から見下ろす臨海部に加え、市街地と背後に連なる六甲山系も眺望できる観光資源になりそうだ。
 市都心部南の再開発では、新港突堤西地区で21年度、アートと水族館が融合した劇場型アクアリウムや商業施設などがオープンする。一方で、観光客が神戸港一帯を回遊できる手段が課題だった。
 神戸市は、ロープウエーは民設民営とし、港内にある市有地3カ所で乗降駅の建設を検討。最長であれば約1・2キロとなる。ただ、海上を渡す支柱の設置は、船舶航路との兼ね合いや景観への配慮、風など気象の観点から実現可能性を慎重に見極める必要がある。
 神戸港一帯の回遊性を高める他の方策としては、架橋や超小型車などの導入もあり、市は事業者から意見を聞く市場調査で、ロープウエー事業への参入意欲なども併せて把握し、計画を固めたい考え。21年度当初予算案に調査費を計上する方針。
 平地を結ぶ常設の都市型ロープウエーは、英ロンドンやシンガポールなど海外で観光名所となっている。日本では21年4月に横浜港(総延長約630メートル)で開業を予定する。神戸港は実現すれば、国内最大の事業となる可能性が高く、神戸市は移動だけでなく「新たなミナトを楽しむアトラクション」と位置付け、コロナ禍終息後のインバウンド(訪日外国人観光客)も見据えた集客の目玉として期待を寄せる。

(2021年1月3日付朝刊より)

まだ調査段階ですが、実現すれば渋滞や天候を気にせず、ウオーターフロントの往き来ができます。ロープウエー自体が、海も山も、街の眺望も楽しめる観光スポットになりそうですね。

<播州人3号>
1997年入社。皆さんは気づかれましたか。記事中のカタカタ表記です。神戸新聞では一般名詞として使う場合、「ロープウエー」と表記しますが、「ロープウェイ」や「ロープウェー」も交じっています。「エ」か「ェ」か、「イ」か「ー」か。音にすれば、それほど違いはありませんが、固有名詞(正式名称)であるため、はっきりと使い分けます。

姫路市の地名「ひろみね」を巡る表記の複雑さを扱った投稿はこちら

#ロープウエー #空中散歩 #眺望 #摩耶ケーブル #神戸 #須磨 #カーレーター #回転