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兵庫県姫路市で栽培される伝統野菜の「メロン」。決して「ウリ」とは呼ばない理由―

問題です。上の写真の果物を何と呼びますか? 正解はウリ、ではなくメロンです。栽培農家が増え、特徴を生かしたスイーツなども続々と開発されている姫路市の「ご当地メロン」について、播州人3号が紹介します。

まずは先日の同僚とのやりとりから。

同僚「そういえば、こないだ近所のスーパーに『メロン』売ってました」(と言いながら、おもむろにスマホの写真を見せる)
播州人3号「おっ、ほんまや、うまそうなメロンやな。高かった?」
「買いませんでしたけど、1盛り350円でした」
「神戸のスーパーにもメロン置いとんや」

社内でも姫路出身者か、姫路で勤務したことのある人にしか通じない会話です。

なぜなら、メロンの正体は「マスク―」でも「アンデス―」でもなく、「網干(あぼし)メロン」だからです。

網干メロンは、姫路市西部の網干区を中心に栽培されています。
地元では有名ですが、流通の範囲はそれほど広くありません。

歴史は古く、大正時代から栽培されていたという記録が残ります。
播州人3号も子供のころによく食べました。

鈴なり「網干メロン」
甘さが自慢、出荷ピーク 

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 姫路市西部で親しまれてきた「網干メロン」の出荷が最盛期を迎えている。生産農家では早朝から、ハウス内で収穫作業に追われている。
 網干メロンはマクワウリの仲間で、大正期からこの地域で栽培されている。重さ約150グラム、長さ約10センチで、糖度が15~16%と高いのが特徴だという。
 「ハウス網干メロン研究会」の会長を務める開發(かいほつ)明弘さん(69)方では、ハウスの温度が上がる前に、と毎日午前5時半から8時までの間に、600個ほどを収穫する。
 昨年から作業効率や日当たり、風通しの良さを確保するため、ドーム型に栽培する方法を採用。あちらこちらからメロンが鈴なりにぶら下がり、〝緑のトンネル〟の中で収穫作業が進んでいる。
 「今年は甘いメロンができた」と満足そうな開發さん。9月中旬まで市内のスーパーに向けて出荷していくという。

  (2016年7月18日付朝刊より)

網干メロンろじ

ハウスで栽培されるほか、夏場には畑で蔓を伸ばした姿も見られます。
地元の子どもにとっては、スイカと同様、夏のおやつや食後のくだものの定番でした。

半分に切って種を除き、皮をむいて食べます。
程よく熟れたものは「本物の」メロンのように柔らかくて甘く、早すぎれば「ポリッ、パリッ」とキュウリを噛んだときのような音がしました。

播州人3号は網干メロンを食べて育ちましたが、同じ姫路市内に別の地名を冠した「ご当地メロン」があります。

その存在を、姫路で勤務するまで知りませんでした。

姫路〝ご当地メロン〟
地域限定 伝統の味守る
妻 鹿 200~300グラム 香りが高く
網 干 150グラム前後 果肉淡緑色
深志野 肉厚 歯ごたえに特色

 妻鹿(めが)、網干、深志野(ふかしの)―。姫路市内の地名がついた“ご当地メロン”の収穫が始まっている。半径約7キロの範囲に3種のメロン産地があるのは全国でも珍しいという。いずれも収穫後の管理が難しいため広くは流通しておらず、地元農家が小規模に栽培しながら伝統の夏の味を守っている。
 姫路農業改良普及センターなどによると、いずれもマクワウリのグループに属するが、色や大きさ、味などが異なるという。妻鹿は200~300グラムで、香りが高い。網干は150グラム前後で、果肉は淡緑色。深志野は肉厚な実と歯ごたえが特色という。
 妻鹿メロンは、明治期に「ペッチンウリ」と呼んで栽培していたものを1930(昭和5)年に命名。網干は20(大正9)年ごろから栽培され、昭和初期には「網干メロン」として出荷していたという。「深志野」は1965(昭和40)年ごろから姫路・佐土地区の農家の種子を元に、深志野集落で栽培し、系統選抜を続けている。
 「盆には仏さんに供え、この季節にはずっと食べてきた」と妻鹿メロンを手掛ける男性(70)。親類や近所に配るために畑の一部で栽培する。深志野メロンの苗を約35年にわたって販売する男性(53)は「味も歯ごたえも異なり、最近は複数の地元メロンを栽培する人もいる」と話す。
 スイカなどと比べると熟れるのが早く、狭い地域で消費されてきたとみられ、同センターは「夏場の甘い食べ物として定着し、それが地元の味として受け継がれてきたのではないか」と話している。

 (2011年8月17日付朝刊より)

農業改良普及センターなどの支援もあり、網干メロンは伝統野菜として栽培する人が増え、商品開発も相次いでいます。

網干メロンロールケーキ


メロンプリン

網干メロンを使ったロールケーキやクリームパン、杏仁豆腐が紙面で紹介されていました。

網干メロンサラダ

サラダに加えても合うようです。

長く親しまれるのは、甘いだけでなく、こんな効果もあったからでしょうか。

甘~い伝統野菜健康面にも効果
網干メロンで血圧降下
ヤヱガキ醗酵技研、成分研究で判明

 姫路市南西部で栽培される「網干メロン」に血圧の上昇を抑える働きのあることがヤヱガキ醗酵(はっこう)技研(同市林田町)の研究で分かった。血圧降下作用の成分がほかの果物と比べても多く含まれていることも判明。地元で親しまれてきた“ご当地メロン”に、健康面での効果も裏付けられた。
 網干メロンはマクワウリの一種。収穫後の管理が難しいことなどから、栽培地だけでなく消費地も限られているという。
 同社は5年ほど前から伝統野菜の網干メロンの研究を始めた。果実部分の粉末をラットに与える実験では、粉末を与えなかったラットと比べて血圧の上昇が抑えられたという。成分分析でも血圧の上昇を抑える作用のある「GABA(ギャバ)」(γ―アミノ酪酸)が発芽玄米の約3・5倍、カリウムもほかの果物と比べて高いことが確認された。
 果実は粉末にでき、少量で高血圧の予防や改善が期待できるとして、同社は地元企業と連携しメロンパン作りや、発酵技術などを活用した商品化にも取り組んでいる。

  (2011年9月28日付朝刊より)

同僚が教えてくれたように、最近は産地からかなり離れた場所でも手に入るようになっています。

店頭に並んでいるのを見かけたら、ウリと決めつけず、メロンとしてぜひご賞味ください。

<播州人3号>
1997年入社。神戸で勤務して「メロン」に驚いたことがあります。神戸の人は、メロンパンのことを「サンライズ」と呼び、神戸の人の言う「メロンパン」とは白あんの入ったラグビーボール形のパンのことでした。「これがメロン?」と驚きましたが、口には出しませんでした。お互いのために。

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