粒坐天照、自凝島、乎疑原…。まるで呪文のような神社の名前、皆さんは読めますか?
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粒坐天照、自凝島、乎疑原…。まるで呪文のような神社の名前、皆さんは読めますか?

こんにちは、シャープです。

今回の投稿は、多くの方々にご好評いただいている「難読シリーズ」の続編です。

兵庫県内の難読地名、難読人名と取り上げてきて、「次は何がいいかなあ」と同僚と話し合ったところ、山、川、信号の標識、駅などさまざまなアイデアが浮かびました。そのうえで、神戸新聞の過去の紙面をいろいろと調べていたところ、たどり着いたのが、人気企画「社寺巡礼」(2007年~15年、全364回)です。

土地土地に鎮座するお社の中から、「これは読めへんやろ」という社名を取り上げてみました。

まずは、メジャーどころから。


①魚吹八幡神社(姫路市網干区宮内)

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10月の秋季例祭は、祭りどころ播磨でも有数の規模を誇り、竹ざおにつるした提灯(ちょうちん)を激しくぶつけ合う「提灯練り」で知られています。氏子25地区から、屋台18台とだんじり5台も繰り出し、県無形民俗文化財に指定されています。
祭りのイメージもあいまって、姫路市民は当たり前のように「魚吹(うすき)」と読みますが、よくよく考えてみると、まあ、かなりの難読ですよね。
ここでは、祭りに対する地元の思いの大きさを表している記事を紹介しましょう。

 JR山陽線をまたぐ姫路市・太子町境のバイパス工事で、廃止が取りざたされていた兵庫県道の踏切の保存が決まった。高架化されるバイパスでは秋祭りの屋台が安全に往来できないとして、ルートとしての必要性を地元が強く主張。普段は人や自転車のみの通行に限り、祭りの2日間だけ車止めを外すという「屋台ファースト」の踏切となる見通しで、JR西日本は「極めて珍しいケース」とする。
 存続が決まったのは、JR網干駅西側を南北に通る県道太子御津線(県道27号)とJR山陽線とが交わる茶ノ木踏切。ラッシュ時間帯の渋滞が激しく、太子御津線の西側約100メートルに高架のバイパスを通す事業が県主体で2011年度に始まった。
 JR西によると、同様の工事の場合、事故防止やバイパスへの車両誘導の観点から、既存の踏切は撤去するのが通例だが、茶ノ木踏切を巡っては地元から「ぜひとも残してほしい」と待ったがかかった。
 理由は、毎年10月21、22日に執り行われる魚吹八幡神社(姫路市網干区宮内)の秋季例祭。屋台を出す18地区のうち、網干駅周辺の5地区が茶ノ木踏切を横断しており、高架のバイパスに代わると、1トン超の屋台の上り下りに危険が伴うとの訴えだった。
 陳情をひっきりなしに受けたという地元の市議は「渋滞がなくなるのは誰もが歓迎していたが、祭りは別もの」と振り返る。5地区の一つ、高田地区の自治会長(68)も「江戸時代から続く祭りの存在は、氏子の体に刷り込まれている」と表現。当日は学校や企業も休みになるなど浸透しており、氏子からは「屋台は鉄道ができる前から通ってたんや」との極論が出たほどだという。
 地域からの強い要望を受け、県はJR西と対応を協議。歩行者らの利便性も踏まえ、茶ノ木踏切の代わりに、近くの柿の坪踏切を廃止する▽茶ノ木踏切は残すが、自動車が通れないようにする―との結論で合意したという。
 県姫路土木事務所によると、茶ノ木踏切の幅員を屋台が通れる5メートル程度に狭め、車止めを設置。秋祭りの2日間だけ、車止めを外して屋台が通行できるようにする方向で調整している。
 担当者は「行政として道路の安全管理だけでなく、地域の文化を守ることも大切だと考えた」と説明。バイパスは橋台の建設が既に始まっており、20年度以降に完成する見通しという。

(2019年10月21日付夕刊より)


②生石神社(高砂市阿弥陀町生石)

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続いても、メジャーどころです。
ご神体の巨石は、高さ5・7メートル、幅6・4メートル、奥行き7・2メートルで、重さは推定500トン。三方をがけに囲まれた池の中に、宙に浮いているかのように鎮座しています。
神社の名前は「生石(おうしこ)」で、この読みも地元では常識ですが、なじみのない人からしたら「なまいし」と読んでしまいそうです。
ただ、地名の読み方はちょっと異なっているようで、そのあたりの経緯を深掘りした記事をご一読ください。

 高砂市の「生石」の読み方は? 正解は「おーしこ」。2文字目を長音符合にしたのは、振り仮名が2通りあるからだ。地名の高砂市阿弥陀町生石や「ふれあいの郷 生石研修センター」など公共施設は「おおしこ」、生石神社は「おうしこ」。古くからの竜山石の産地なので地名に石が含まれるのは理解できるが、なぜ振り仮名が違うのか。その理由に迫るべく、取材を進めた。
▼神社は「おうしこ」
 竜山石をくりぬいた巨石の造形物「石の宝殿」がご神体の生石神社。宮司に尋ねると「『生』の読み方を辞書で調べたら、『お・う』はあるが、『おお』とは絶対に読まない」。さらに「宝殿も『ほーでん』と発音しても『ほおでん』ではなく、『ほうでん』でしょう」と明快に説明してくれた。
 確かに文化庁ホームページによると、現代仮名遣いのルールとして「オ列の長音は『う』を添える」とある。オ列とは50音図の5段目のこと。角川書店の「角川日本地名大辞典」にも「おうしこ」と書かれ、国語の原則に沿った表記が採用されている。
 宮司は、読み方の由来についても持説を教えてくれた。地名はかつて「生石子」とも書かれ、もともと「お・いし・こ」と読まれていた。次第に「おーしこ」と発音されるようになり、いつしか3文字目の「子」が表記されなくなったという。確かに神社の鳥居には「生石子」との額が掛かっている。
▼地名は「おおしこ」
 ところが、住宅地図や道路地図で見られる振り仮名は「おおしこ」。国内全ての地図の基礎となる地形図を作成する国土地理院によると、高砂市阿弥陀町生石に「おおしこ」と付けられるようになったのは、1969年発行の2万5千分の1地形図修正版から。それ以前は「オウシコ」「オーシコ」とばらついていたという。
 表記は各市町村から提出される地名調書に基づくため、高砂市側からの申請で、わざわざ現代仮名遣いとは異なる振り仮名で統一されたことになる。同市総務課に理由を問い合わせたが、当時を知る職員は残っておらず、経緯は判然としない。

(2021年5月4日付東播版より)
→記事の続きはこちら


ここからは、ちょっと難度を上げていきましょう。
③~⑥の正解は、この記事の後半でまとめて紹介しますので、ヒントを頼りに、頭をひねってみてください。

③自凝島神社(南あわじ市榎列下幡多)

読み自体は、国生み神話に基づく、なじみ深いものです。
国づくりを命じられた2神が、天の浮橋に立って沼矛(ぬぼこ)で海原をかき回し、矛から滴る潮が、自ずと凝り固まって島となったーー。
由来に直結する「自ずと……」の部分を繰り返し口ずさんでみると、答えが出てくるはずです。
ちなみに、南あわじ市以下の住所は「えなみしもはだ」で、こちらも難読。

④酒滴神社(三田市藍本)

室町時代に建立された神社で、県指定文化財の石造鳥居は、銘文が残るものとしては県内最古。霊水伝説が語り継がれており、今も湧き水をくみにくる人がいるといいます。
社名も、この伝説に基づいたもの。
室町時代に疫病がはやり、当時の天皇がこの霊水を取り寄せて病人に分け与えたところ、見事に治癒。感心した天皇は、水の香りが酒に似ており、岩から滴り落ちることから、「酒滴」と冠したそうです。
ヒントを出すとすれば……、「滴」は「したたる」とは読みません。


⑤乎疑原神社(加西市繁昌町)

学問の神とされる菅原道真が平安後期に合祀(ごうし)されたことから、「繁昌の天神さん」として地元では親しまれています。
名前は、地元周辺の地名から採用されたと伝わりますが、詳しいことは分かっていません。
「疑原」については、普通に読んでもらえればいいのですが……。


⑥敏馬神社(神戸市灘区岩屋中町4)

約1800年前の創建とされ、神戸市内最古の神社の一つとされています。1945年6月5日の神戸大空襲で、本殿や拝殿は焼失し、絵馬堂と社務所だけが残りました。
「敏馬」は、万葉集に出てくる由緒正しい地名で、日本酒の銘柄にも採用されました。


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いかがだったでしょうか。

正解は、③自凝島(おのころじま)、④酒滴(さかたれ)、⑤乎疑原(おぎはら)、⑥敏馬(みぬめ)です。

神社関係者以外で全て読めた人は、本当にすごい!
そんな人のために、最後に一つ、超難問を用意しました。
心して、どうぞ。

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⑦粒坐天照神社(たつの市龍野町日山)

平安時代の延喜式神名帳では、由緒ある明神大社の一つに挙げられ、播磨では伊和神社(宍粟市)、海神社(神戸市垂水区)とともに、社格の高さを誇っていたそうです。
「天照」については、そのまま、常識的に読んでいただいて結構なのですが、問題は「粒坐」の部分。当然、「りゅうざ」ではありません。
この2文字で、平仮名6文字と、かなり長くなります。

社寺巡礼では、社名の由来について、次のように触れられていました。

「たつの市周辺は古代、揖保郡(いひほのこおり)と呼ばれた。揖保とは粒(いいぼ)、つまり米粒を指す。粒坐天照神社は揖保に座す代表的な神社、という位置付けだったようだ」

ヒントと言えばヒントなのですが、これだけでは分かりようがないので、正解を発表しましょう。



「粒坐天照(いいぼにますあまてらす)神社」です。


「漢字が読めない」だけでなく、「声に出しても読みづらい」社名だけに、やはりと言うべきか、地元では「りゅうざじんじゃ」で通っているそうです。

ちなみに、先ほど触れた神戸市垂水区の「海神社」については、「かいじんじゃ」と呼ぶ人がほとんどだと思いますが、実は正式な読み方ではありません。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


<シャープ>
2006年入社。初詣など一切の参拝をしない家で育ったため(特別な主義、主張があったわけではありません)、記者になるまでまともに神社を訪れたことがありませんでした。取材などで足を運ぶにつれ、地域の歴史とともに、「鎮守の森」など豊かな自然を今に伝える貴重な存在であると実感しています。

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兵庫県の地方紙「神戸新聞」です。過去記事の中から、記者らがテーマごとに独自の視点で選び、背景や取材の裏話などとともに紹介します。ゆかりの有名人の逸話や、ほっこりする地域の話題など兵庫の魅力を、毎週水曜正午と土曜午後6時に投稿します。「おもろい」と思われた方、ぜひフォローください