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なぜそこに? 神戸・長田に巨大な鉄人28号が立つ理由

神戸市長田区に鉄人28号の巨大なモニュメントがあります。商店街に近く、JRの電車内からも見え、街のシンボルになっています。「なんで鉄人28号?」と最近、何度か聞かれることがありました。完成から10年余りがすぎ、そこにある理由に触れた記事を播州人3号が紹介します。


モニュメントはJR新長田駅のすぐそば、若松公園内にあります。
全長は原寸大の約18㍍。像の真下にまで近づくことができるのも魅力です(足に触れられます)。
近くに商店街や量販店もあり、休日などは親子連れでにぎわいます。

計画したのは地元の商店主らでした。

「鉄人28号」を復興の象徴に
神戸出身の漫画家・横山光輝さんにちなみ
新長田で地元有志ら計画

 神戸出身の漫画家、故横山光輝さんの代表作「鉄人28号」の誕生から五十周年に合わせ、再開発が進むJR新長田駅周辺の地元有志が、駅前でのモニュメント設置や「横山光輝記念館」の建設を目指して活動を始めた。題して「KOBE鉄人プロジェクト」。メンバーは「鉄人28号を神戸、新長田の震災復興の象徴にしたい」と意気込む。第一弾として六月、鉄人28号と横山さんの業績を紹介する特別展を新長田アートギャラリーで開く。
 横山さんは一九三四(昭和九)年、神戸生まれ。市立須磨高校在学中から漫画を描き、二十一歳で「鉄人28号」を発表。昭和の子どもたちを熱狂させる大ヒット作となり、活動の場を東京に移した。〇四年、自宅の火災で亡くなるまで数々の名作を生み出した。他の代表作には「伊賀の影丸」「バビル2世」「魔法使いサリー」「仮面の忍者赤影」「三国志」などがある。
 横山さんの業績に今年一月、新長田の地元商店街などの経営者が着目。「復興のシンボルとともに、地域活性化につなげたい」と構想を練り、鉄人28号のモニュメント制作、記念館設立の目標を掲げた。横山さんの作品の著作権をもつ「光プロダクション」(東京)にも快諾を得て、近く実行委員会を立ち上げ、寄付や募金活動を本格化させる。
 旗揚げイベントとなる特別展は六月十七日―七月二日まで。鉄人28号や横山さんの経歴を紹介するパネルに加え、原画や鉄人28号のフィギュア、精巧なロボットなど約百五十点を展示する。
 一方、神戸に住む横山さんの旧友らも活動を進めているといい、同プロジェクトを呼びかける自営業、正岡健二さん(58)は「みなさんと一体で、モニュメント、記念館建設の夢を実現できたら」。また、横山さんの妹で同プロダクション社長の徳永俊子さんは「以前から兄の業績をまとめてもらえる場があればと考えていた。ゆかりの神戸からの申し出は大変ありがたく、できる限り協力したい」と話している。

  (2006年5月25日付朝刊より)

JR新長田駅周辺は、1995年の阪神・淡路大震災までは商店やケミカルシューズ工場などが集まる下町でした。
震災による火災などで街は甚大な被害を受け、大規模な再開発が進められます。

鉄人プロジェクトは、震災から9年余りたったころに発表されました。
力強い復興と、新たなにぎわいづくりが昭和のヒーローに託されました。

神戸市などの後押しもあり、計画は4年越しで実現します。

神戸で鉄人28号完成
地元商店主ら地域活性への思い貫く 

 神戸出身の漫画家、故横山光輝さんの代表作「鉄人28号」の原寸大モニュメントが、JR新長田駅南地区の若松公園(神戸市長田区)についに完成した。地元商店街の経営者らが結成したNPO法人「KOBE鉄人プロジェクト」の4年越しの計画が実った。総工費1億3500万円。4日に完成式典がある。長田のまちに「正義の味方」が出現するまでの経緯を追った。
 横山さんは1934(昭和9)年、神戸市須磨区で生まれ、太田中を経て、須磨高校のときに漫画を描き始めた。56年、月刊少年漫画雑誌「少年」(光文社)に「鉄人28号」を発表。故手塚治虫さんの「鉄腕アトム」と人気を二分し、「マジンガーZ」などに続くロボット漫画の先駆けとなった。
 テレビアニメの第1作は63~66年に放映。中年世代は「ビルのまちに ガオー」の歌詞も、少年探偵・正太郎がリモコンを操縦する姿も懐かしいという。関連作品が相次ぎ、2005年には実写版の映画も公開された。
 阪神・淡路大震災からの復興を目指し、再開発が進む新長田の商店街関係者らが鉄人に着目したのは05年秋ごろ。同プロジェクトの正岡健二理事長(61)は「鉄人28号誕生50周年の06年に、復興のシンボルとして横山さんにちなんだ事業に取り組もうと考えた」と話し、モニュメントの制作と「横山光輝記念館」の建設を掲げた。
 モニュメントの原型は07年4月、プロジェクト実行委がデザインコンペを実施。模型・造形作家の速水仁司さん=大阪市=の作品が選ばれた。速水さんが「ファイト一発」と呼ぶポーズは「パンチをする姿勢で、復興に向けての意気込みを意識した」そうだ。
 主に商店主や企業、市民の協賛金約6000万円に、市の補助金4500万円を加え、資金調達に一応のめどもつき、08年11月、大阪府岸和田市の金属加工会社「北海製作所」で部品の制作が始まった。速水さんの原型を基に3D解析しながら設計。材料は、さびに強い耐候性鋼板を選んだ。
 工程は鋼板の切断やプレス加工、溶接など。細部まで再現するため約10人の職人が細かな溶接と切断作業を繰り返した。林孝彦社長(44)は「顔の輪郭や胴の丸みを忠実に再現するのは難しかった」。 
 今年7月に入り、若松公園に部品が運び込まれた。部品数は約230個。8月11日に組み立てが始まった。
 鉄人の体内では、職人が2人一組で鉄骨と体の部品を手作業でつなぎ合わせた。つなぐボルトだけで約600個。夏場、汗だくの作業が続いた。
 両脚、胴体、両腕、背中のロケットの順に組み立てが進み、頭部が胴体に取り付けられたのは9月7日。その後、仕上げの塗装が施され、29日に足場が撤去され、威容が現れた。発案から約4年。鉄人28号が新長田に帰還した。
 正岡理事長は「これからがスタート。長田のランドマーク(目印)としてまちづくりに生かさなければ」と意気込む。

  (2009年10月1日付朝刊より)

盛大な式典で祝われました。
テープカットには20人以上が並んでいます。

「鉄人28号」発進!
 原寸大像完成で式典

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 阪神・淡路大震災の復興のシンボルとして組み立てられた「鉄人28号」の原寸大モニュメントの完成式典が4日、神戸市長田区の若松公園で開かれた。関係者や地域住民ら約1000人が全長18メートルの正義の味方を見上げ、完成を喜んだ。
 鉄人28号は同市出身の漫画家故横山光輝さんの代表作。地元商店主らが「震災復興のシンボルに」と計画、大阪府岸和田市の工場で制作され、JR新長田駅南地区の同公園に設置された。
 式典で、企画した特定非営利活動法人(NPO法人)「KOBE鉄人プロジェクト」の正岡健二理事長(61)が「完成を機に、まちの再生に向けて精いっぱい取り組んでいきたい」とあいさつした。1963~66年に放映されたテレビアニメ第1作で、鉄人を開発した敷島博士の声を担当した矢田稔さん(78)が、「鉄人28号」と声を掛けると、関係者28人がテープカット。色とりどりのテープが空中に舞い、完成を祝った。

  (2009年10月5日付朝刊より)

別の記事で、胴回り約20㍍、足先の長さ約4㍍、体重50㌧―とありました。
巨大なモニュメントがどうやって組み立てられたか。
完成までの経緯をたどる写真が掲載されていたので紹介します。

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大阪の工場で仮組み(2009年6月23日)

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頭部到着、起工式(09年7月27日)

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両足設置(09年8月11日)

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胴体組み立て(09年8月21日)

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両腕取り付け(09年8月22日)

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塗装中(09年9月3日)

完成後は、文字通り街のシンボルになります。

選挙権はないですが…
鉄人28号に住民票交付

 震災復興のシンボルとして、神戸市長田区の若松公園に設置された漫画「鉄人28号」原寸大モニュメントへの特別住民票交付式が29日、現地であった。
 市による住民票交付は「鉄人が、より市民に親しまれる存在になってほしい」との趣旨。
 漫画の主人公、少年探偵・正太郎と同じ読みの名を持つ児童4人が、縦59センチ、横84センチに引き伸ばした特別住民票のパネルを長田区長から受け取った。
 その1人で宮川小5年の児童(10)は「大きくてすごい迫力」と鉄人に圧倒された様子。長田区長が「選挙権はありませんが、鉄人は立派な神戸市民です」と話すと、会場に笑いが起きた。
 特別住民票は30日~1月末、長田区のホームページで閲覧、印刷できる。

  (2009年11月30日付朝刊より)

投票率アップにも一役買います。
選挙管理委員会が頼りたくなるぐらいの人気だったのでしょう。

鉄人も清き一票 神戸・長田
巨大投票箱お目見え 

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 神戸市長田区のJR新長田駅近くの若松公園にある「鉄人28号」のモニュメント前に14日、高さ5メートル超の巨大な投票箱が登場した。22日投開票の衆院選、神戸市長選、同市議補選の投票率アップを目指し、同市選挙管理委員会が設置した。原寸大(約18メートル)の鉄人に合わせたビッグサイズで、1票の重みを伝える。15日まで。
 同市選管は、市内の大学生に啓発用動画やポスター作製などを呼び掛け、投票率のアップに取り組んでいる。14、15の両日、巨大投票箱の前で、学生による啓発事業優秀賞の表彰式や関連イベントがある。

  (2017年10月14日夕刊より)

夜のにぎわいスポットにもなりました。

夏の鉄人 極彩色
神戸・長田ライトアップ

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 阪神・淡路大震災の復興のシンボルとして、神戸市長田区の公園に設置され、人気を集める「鉄人28号」のモニュメント(高さ18メートル)が30日夜、ライトアップされた。約50個の照明を使用。赤、緑、青の光を浴び、夜の街に浮かび上がった鉄人に、買い物客や通行人らが携帯電話のカメラなどを向けていた。
 これまでにも照明を点灯したことはあったが、市民らの要望もあり、NPO法人「KOBE鉄人プロジェクト」が、31日と8月1日の2夜限定で照明の数を大幅に増やす「スペシャルライトアップ」を企画。この日は午後7時半すぎから試験点灯が行われた。
 同市須磨区の専門学校生(19)は「いろんな色の鉄人が見られて面白い。定期的に点灯すればにぎわいが増しそう」と話していた。
 本番のライトアップは午後7時半~同10時(8月1日は同9時半)。午後6時からモニュメントがある公園でビアガーデン(約180席)を営業する。

 (2009年10月31日付朝刊より)

ライトアップされた鉄人を眺めながらのビールは、さぞかし爽快でしょう。

モニュメントには大勢の人が訪れました。
どのぐらいの効果があったのでしょうか。

「鉄人」の経済効果142億円 神戸・長田
大阪市立大研究会が試算 「地域経済に大きく貢献」

 神戸市長田区の若松公園にある「鉄人28号」の原寸大モニュメントの経済効果が142億7千万円に上るという試算結果を、大阪市立大経済効果研究会が1日、発表した。神戸市内への波及効果は、うち48・1%の68億5800万円という。
 モニュメントは、阪神・淡路大震災の被害が大きかった神戸・新長田駅南地区の活性化に取り組むNPO法人「KOBE鉄人プロジェクト」(神戸市長田区)が企画。2009年10月に完成した。
 経済効果は、建設費などの事業効果のほか、完成から今年3月末までの6カ月間に訪れた見学客の消費効果などを合算。神戸市などの調査に基づき1日の見学客数を平均1万人、消費額を1人2872円とした。
 消費効果は115億8100万円で、うち買い物消費が33億9130万円。このほか、鉄道利用料などの交通効果が21億4900万円、事業効果は5億4000万円だった。
 同大の小長谷一之教授は「経済効果のほぼ半分は神戸市外におよび、関西全体の活性化に役立っている。非営利団体の事業が、これほど地域経済に貢献したことは意義深い」と話す。同法人の正岡健二理事長は「勢いのあるうちに、ほかの活性化策と合わせ、地域を盛り上げたい」としている。

  (2010年12月2日付朝刊より)

驚きの効果です。
2011年に始まった神戸マラソンでも全国のランナーがモニュメントそばを駆け抜けるなど、効果はさらに拡大しているでしょう。

▢ ■ ▢ ■ ▢ ■

ところで、これまでの写真を見て何か気付かれましたか。
ヒントは鉄人の頭部です。

新長田に再びガオー
鉄人28号 新色お披露目

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 神戸市長田区のJR新長田駅前にそびえ立つ、「鉄人28号」の巨大モニュメントの塗装修繕作業が終わり、6日、記念式典が開かれた。原作漫画に近いコバルトブルーに塗り替えられ、輝きを取り戻した姿に住民らが一斉にカメラを向けた。
 阪神・淡路大震災の復興のシンボルとして2009年に登場した鉄人はアニメ版のブルーグレーだったが、今回の塗り替えでは、昔ながらのファンの要望にも応え、鮮やかな青色となった。塗装の費用約600万円は地元企業の協力や1枚3千円の協賛Tシャツの売り上げで賄った。
 式典には約300人が参加。鉄人を管理するNPO法人「KOBE鉄人PROJECT」の正岡健二理事長(68)は「より存在感を増す色になった。神戸のランドマークとしてますます活躍してくれるはず」と期待を寄せた。

 (2016年11月7日付朝刊より)

こちらが塗り直された頭部です。下の塗り直し前と比べてみてください。

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より原作に近い色使いになっています。

塗り直し中の鉄人は、まるでとらわれの身のようです。

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街のシンボルとして定着している鉄人ですが、最近になって新たな動きがありました。

神戸市が老朽化した神戸市立医療センター西市民病院の移転方針案を発表しました。同じ長田区から鉄人の立つ若松公園内に移転・新築するという内容でした。

実現すれば、被災地を勇気づけてきたように、入院患者らにもパワーを与えてくれるのではないでしょうか。

<播州人3号>
1997年入社。横山作品で言うと「バビル2世」の世代です。同僚が泊まり勤務明けでふらふらのとき「超能力の切れかかったヨミ(悪役)やな」という冗談が通じましたが、今はだめですね。街中の黒ネコに「ロデム(しもべの一つ、本物は黒ヒョウ)!」と呼びかける子どももいないのでしょうね。

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