記者が詠み人に?「ここで一句」3選
見出し画像

記者が詠み人に?「ここで一句」3選


こんにちは、シャープです。

今年5月13日付の神戸新聞丹波篠山版に、一風変わった記事が掲載されました。

水を張ったばかりの田園地帯を切り取った写真に、情感たっぷりの描写を添えて堀井正純記者がつづったものです。

何が変わっているかというと…、取りあえず、その記事を読んでいただきましょう。

絶景

  絶景かな、絶景かな―。丹波市春日町の中世山城・黒井城跡(国史跡)からの眺望は素晴らしいの一言。眼下に、パッチワークのような田畑が広がる。
 緑や土色の農地が点在する中、陽光に鏡のように白く輝くのは、田植えの進む水田の数々。大小さまざまの長方形の連なりは、幾何学的な抽象画のようでもある。
 山上では、朱色のヤマツツジの花が咲き、新緑の木々と鮮やかなコントラストを描く。光る田んぼを見下ろしながら、一句ひねった。〈水鏡 丹波路映す 田植えかな〉。おそまつ。

そう、記事の文中で、記者が俳句を詠んでいるのです。

写真を見るに、思わず一句浮かぶのもうなずける絶景ですよね。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

このように、記者が自作の句や歌を織り込んだ記事は、数は多くないものの、いくつかあります。

今回は、その中から3つ、紹介したいと思います。


① 城下町 うつろう時代 巡る春

(2012年4月24日付朝刊より、桑野博彰記者)

城下町

 織田信長の子孫が治めた丹波市柏原町柏原。JR柏原駅周辺には、国指定史跡の柏原藩陣屋跡や織田神社など織田家ゆかりの名所旧跡が数多く残る。歴史と文化がぎゅっと凝縮されたこの小さなまちを歩いてみた。
 JR柏原駅を降りると早速、地元ゆかりの江戸時代の俳人田捨女(でんすてじょ)の石像が出迎えてくれた。
 雪の朝 二の字二の字の 下駄のあと
 有名な一句が口をついて出る。毎年5月には、田捨女にちなんだ俳句ラリーが催され、愛好家が吟行を楽しむ。散策を終えるまでに、一句詠んでみようか。
 ゴールは陣屋跡と決め、界わいを歩く。観光案内所周辺は、厄よけ大祭で有名な柏原八幡神社、県天然記念物の大ケヤキ「木の根橋」など見どころが多い。
 前期織田藩三代目藩主の織田信勝を祭る織田神社もその一つ。「毎日お参りしています」と年配の女性。今でも親しまれているようだ。
 大手通り、八幡筋通りなど古い名が残る小路には、昔ながらの商店や民家が軒を連ねる。「飾らない素朴なまちですが、そこが魅力」と観光ボランティア(69)。最近は、歴史好きの若い女性観光客が増えているとか。陣屋跡に向かう前に、歴史ファンがよく訪れるという「織田家廟所(びょうしょ)」へと足を延ばした。
 住宅地の奥まった一角にひっそりと残る廟所には、歴代藩主とその一族の墓が立ち並ぶ。「かつては菩提(ぼだい)寺の境内でしたが、明治時代に廃寺となり今は廟所だけです」と観光ボランティア。領主の墓所というには随分とわびしいたたずまい。物悲しさを感じずにいられない。
 そんな感慨を抱きながら陣屋跡へ。質素ながらも威厳に満ちた外観は、廟所とは対照的に、織田家の名声を伝え続けているかのようだ。門のそばには、「ここで一句」と言わんばかりに投句箱。それでは―
 城下町 うつろう時代 巡る春

田捨女の句を前振りに、最終盤で自作を挿入しています。

投句箱を見つけて着想した構成なのでしょうか。

城下町の今昔が、ぎゅっと凝縮されたような風情ある記事でした。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

続いては、川柳コンテストの話題に添える形で記者コラムを掲載し、自作の句を披露している記事です。


② 立ち並ぶ お菓子の老舗 いとをかし

(2011年9月6日付朝刊より、直江純記者)

川柳コンテスト

 神戸元町商店街連合会が「もとまち川柳コンテスト」を初めて企画し、作品を公募している。130年以上の歴史を持つ商店街への愛着や思い出をユーモアたっぷりに表現してもらう。まずは店主の一人が一句。「商店街 値札のつかぬ 笑顔売り」。
 元町通1丁目から6丁目まで、約1・5キロの東西の通り。1874(明治7)年に西国街道が「神戸の元の町」として元町通に改称されて以来、神戸の中心的商業地として繁栄してきた。
 1926(大正15)年に「すずらん灯」が完成。戦前は呉服店などから発展した百貨店が並び、通りをそぞろ歩く「元ぶら」が流行語になったが、第2次大戦では灯の金属柱が供出され、空襲で焼け野原になった。
 戦後は軍用機の金属を建材に転用して「ジュラルミン街」として復活し、53(昭和28)年には全国初の鉄骨アーケードが登場。阪神・淡路大震災でも打撃を受けたが、明治、大正創業の老舗(しにせ)も多く残っている。
 川柳コンテストは、元町1番街商店街振興組合の副理事長(54)らが提案。「大型店舗に押されぎみの商店街に、お客さんがどんな印象を持っているのか知りたかった」。ウイットを利かせた川柳なら、参考になる苦言も引き出せるのでは―と期待している。
   ◇   
 立ち並ぶお菓子の老舗いとをかし
 この夏、本紙で元町などを舞台にした「戦火と神戸スイーツ」を連載した私も一句ひねってみました。
 元町通は、明治創業の老舗からフランス人パティシエが腕をふるう新鋭店まで、神戸スイーツの総本山のようなエリアです。菓子以外にも、海事書の品ぞろえ豊富な「海文堂書店」や、国内で初めてコーヒーを出した「放香堂」など個性的な店があちこちにあります。
 「元ぶら」は 手ぶらで帰れぬ 品ぞろえ
 おっと、また駄じゃれが頭に浮かびました。私の駄句が間違っても入選しないよう、皆さんの傑作を楽しみにしています。

一句では飽き足らず、もう一句を加え、さらに駄じゃれと「駄句」を引っかけるあたり、かなり凝ったつくりとなっています。

で、実際にコンテストで入選したのかどうか、念のため直江記者に確認してみたところ「自作の川柳についてはほとんど覚えていませんが、入選していないことは確かです」。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

3句目は、私、シャープの作品を紹介させていただきます。

記者2年目の時に、「まちをあるけば」というコーナーの記事で詠んだものです。

最初に言っておきますが、「五七五七七」という短歌の定型にのっとってはいるものの、歌と呼ぶのがおこがましい出来栄えです。

今、改めて振り返ってみても、何を表現したかったのか、全く意味が分かりません。

前置きが長くなりましたが、もろもろ含んだうえで、どうぞ。


③ ダビデ像 大仏様に 西郷どん 新たな出会いが あるかモニカ

(2007年10月17日付朝刊より、シャープ記者)

モニカ

 芦屋市を流れる宮川のほとりに、金色の女性像を発見。ひざを抱えて顔をうずめ、ひどく落ち込んでいる様子だ。
 テナントビルの敷地内に三十年以上前からあり、一階の美容院の従業員らは、金髪の外国人風のイメージから「モニカ」と呼んでいる。店長は、モニカのポーズを「寝ているだけ」と推測するが、見方によっては失恋してふさぎこんでいるようにも。
 こうつぶやいているようなモニカ。「派手な女は嫌いだって、金剛力士像にふられたの…」。世に男性の像は多い。彼女に励ましの歌を詠もう。
 「ダビデ像 大仏様に 西郷どん 新たな出会いが あるかモニカ」

美容院の店長が「寝ているだけ」と言っているのに、完全に無視して恋煩いと決めつける。派手だの何だの勝手な妄想を繰り広げ、挙げ句、古今東西の男性像を脈絡もなく列挙した歌で強引に着地させる。

我が事ながら、狂気の沙汰としか言いようがありません。

何がどうしてこうなったのか、記憶がさっぱり残っていないので答えようがないのですが、取りあえず「若気の至り」の一言で包み隠したいと思います。

ちなみに当時、この記事を紙面に組んでくれた整理部の担当の方は、おもしろがってくれたようで、こんな見出しを付けてくれました。

「芦屋の女性像 こうべ垂れ 恋の悲しみ いつ癒える」

そう、「こうべ垂れ―」以下が、五七五になっているのです。

この整理担当の方の温かい対応が、今となっては、黒歴史感をさらに増幅させています。


<シャープ>2006年入社。「モニカ」の記事を挙げておいて何の説得力もないが、実はかなりの和歌好き。一押しは「三夕の歌」の一首、「見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」(藤原定家)


#俳句 #短歌 #川柳 #五七五 #五七五七七 #ここで一句 #丹波 #元町 #芦屋








うれしいです。姫路・網干の秋祭りの様子です(2019)
兵庫県の地方紙「神戸新聞」です。過去記事の中から、記者らがテーマごとに独自の視点で選び、背景や取材の裏話などとともに紹介します。ゆかりの有名人の逸話や、ほっこりする地域の話題など兵庫の魅力を、毎週水曜正午と土曜午後6時に投稿します。「おもろい」と思われた方、ぜひフォローください