【クイズ】名物記者のおもろいコメント3選
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【クイズ】名物記者のおもろいコメント3選

どうもこんにちは、シャープです。

神戸新聞社には、個性豊かな記者が数多くいます。今回は、そんな中でも特に異彩を放っている、2003年入社の黒川裕生記者を紹介します。映画やサブカルチャーの知識が深く、文化部などを経て、現在は「まいどなニュース」の編集部で健筆を奮っています。

黒川記者の本領が発揮されたのが、2016~18年に勤務していた香住支局でした。日々の地方版に掲載される「マチダネ」取材で、記事に添える一般市民らのコメントにこだわり始めたのです。

食の催しなら「おいしかった」、体験型イベントなら「楽しかった」、伝統的な催しなら「歴史を感じた」という、ありきたりなコメントはつまらない。とにかくおもろいコメントで、読者をくすりとさせてやるーー

強い思いを胸に、ひょうひょうとした外見と巧みな話術を駆使して取材相手と会話を重ねた結果、香住発の記事に、ユニークなコメントが次々と登場するようになりました。

今回は、そんな黒川記者が書いた香住支局時代のマチダネ3本を、クイズ形式で紹介します。

記事中のかぎ括弧「★★★★★★★★」にどんなコメントが入るのか、4つの選択肢から選んでください。なお、問題作成に当たり、記事の一部を修正・省略しています。


<第1問>「百手の儀式」で矢が当たらず…

                (2018年1月29日付但馬版より)

第1問

 平家の落人伝説で知られる香美町香住区余部の御崎地区で28日、伝統行事「百手(ももて)の儀式」が営まれた。平家の再興と一年の平穏を願い、裃(かみしも)で正装した若者3人が、的を目掛けて101本の矢を次々と放った。
 同地区には、壇ノ浦の戦い(1185年)に敗れた平家の武将が隠れ住んだという伝承が残る。百手の儀式は、武将の子孫が武術の修練を積んだのが始まりとされ、毎年集落の若い男性が射手を務める。
 初めて射手を務めた中学生(13)は「ずっとやってみたいと思っていたけど、実際にやると難しかった」と苦笑。儀式はかつて、源氏の武将の目を描いた絵を的に使うなど、平家の再興を期す色合いが今より強かったという。矢があまり的に当たらなかった会社員(20)は「★★★★★★★★」と唇をかんだ。

 ① 源氏には今年も勝てなさそうです…

 ② 那須与一にはなれなかった…

 ③ 生き恥をさらした。夜逃げしないといけない…

 ④ 的が、大嫌いな上司の顔だったら… 


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


さあ、どうでしょうか。一般的な記事のコメントでは、まず見かけないようなせりふばかりですよね。

「え~、この中に本当に答えがあるの?」と思った方もいるでしょうが、現に、選択肢の一つが紙面に掲載されています。

では、答えです。

少しだけ、下にスクロールしてください。






① 源氏には今年も勝てなさそうです…


平成生まれの20歳の会社員が、800年以上前の源平合戦をいまだに引きずっているという、にわかに信じがたいせりふなのですが、そうとも言い切れません。

私も現地を訪れたことがあるのですが、集落に住んでいる人の多くは、平家の末裔であることに誇りを持っており、「落人伝承」ではなく、「平家伝承」という表現を使います。

取材した高齢男性は「よそもんは『落人伝承』って言うけど、負けたもんいう烙印を押された感じでいい気はせんわな。確かに、源平合戦では負けたかもしれんけど、まだ決着は付いてへん。いつの日か、源氏を破るために、こうやって百手の儀式を続けとるんやから」と真剣な表情で話していました。


<第2問>ジネンジョすりおろし競争で優勝!

                (2017年12月4日付但馬版より)

第2問

 美方産のジネンジョをPRする「自然薯(じねんじょ)まつり」が3日、香美町村岡区大糠の道の駅「村岡ファームガーデン」で開かれた。日本で、否、世界で唯一の大会「自然薯すりおろし競争」には10人が出場。細長いジネンジョを折らないように、慎重かつ素早くすりおろすべく力戦奮闘した。
 生産者を後押ししようと同駅が毎年開催。美方産は粘り強い食感と濃厚な風味が特長という。すりおろし競争は、来場者に振る舞われるみそ汁の下ごしらえを兼ねた一見素朴な催し。半面、他に類似のレースがないため〝世界大会〟を自称する知る人ぞ知る大会でもある。
 食感は粘り強いとはいえ、ジネンジョが折れやすいのはご存じの通り。おろし金を手にした出場者は「折れたらタイムに1分追加」という罰則におののきながら、繊細なジネンジョと懸命に格闘していた。優勝した豊岡市福田の保育士(50)は「★★★★★★★★」と表情を引き締めていた。

 ① 世界記録保持者として、これまで以上に品行方正を心掛けねば

 ② すりおろされたジネンジョの痛みを考えると、素直に喜べない

 ③ 私の記録を超えるよう、子どもたちをスパルタで鍛えたい

 ④ カニの早食い大会が来週に迫っており、余韻に浸る暇はない  

   

◇ ◆ ◇ ◆ ◇


第1問に続いて、大喜利のようになってきました。

事前にこの原稿を確認した黒川記者が、「間違いの選択肢もおもろい」と評価してくれ、一人ほくそ笑んでいます。

今回も、4つの中で一つだけ、実際の記事でコメントに使われています。

正解は……。

また、少しだけ下にスクロールしてください。






 世界記録保持者として、これまで以上に品行方正を心掛けねば


どんなに些細な記録でも、ワールドレコードはワールドレコードであり、卑下するようなことはない――という考え方は、ギネスブックの存在が証明しています。

どれほど大会規模が小さかったとしても、たとえその記録が誰からの注目を集めなかったとしても、自分自身の誇りとなり、律する支えとなるのならば、それはそれで意味があることなのでしょう。

……取りあえず、コメントを額面通り受け取ってみました。


<第3問>カニの着ぐるみが、まさかの〝暴挙〟

                (2018年9月16日付但馬版より)

第3問

 「第10回香住ガニまつり」で、カニをイメージした香美町のゆるキャラ「かすみちゃん」の着ぐるみが、はさみを脱ぎ捨てるという掟(おきて)破りの珍事が発生した。
 全国から集まった「かすみさん」を紹介する企画の中で、審査に漏れた6人が、敗者復活の景品を賭けてかすみちゃんとじゃんけん勝負をすることに。「(カニの着ぐるみなので)どうせチョキしか出せへんやろ」と高をくくる6人の前で、かすみちゃんは突如、左のはさみをロケット砲のごとく〝発射〟。驚いたことに、中から人間の手のようなものが現れ、グーチョキパーを自在に繰り出したのである。
 「まさかと思った」と加古川市から訪れた参加者(40)。こんなことが許されるのか。香住観光協会の事務局長を直撃すると「★★★★★★★★」

 ① あー、OK、OK

 ② 文句あるなら訴えて 

 ③ さるかに合戦や!

 ④ 敗者がぐちぐち言うたらあかん

   

◇ ◆ ◇ ◆ ◇


第3問は、イベントの主催者側のコメントです。

カニの着ぐるみから人間の手が出ているという、問題のシーンを収めた上記写真からして、なかなかシュールですよね。

参加者とみられる女の子が呆然と立ちすくみ、後ろの女性は「あちゃー」みたいな感じで、顔を手で覆っています。

「掟破りの珍事」を厳しく追及した黒川記者に対し、主催者側は、何と答えたのでしょうか。






① あー、OK、OK


記事のコメントは、取材相手の話した内容をそのままかぎ括弧に入れるのが原則なのですが、読者への伝わりやすさなどを考慮して、〝丸める(要約する)〟ことも珍しくありません。

ただ、その場合、コメントをした人の独特の間合いや口調、雰囲気はそぎ落とされ、無味乾燥になることも多々あります。

今回の正解コメントも、丸めれば「OKです」などとなるのでしょう。

そこを、あえて「あー、OK、OK」とそのまま書くことで、そこはかとない投げやり感とともに、「そんな細かいこと、気にしないでよ」という取材相手の心の声が聞こえてくるような気がします。

黒川記者本人は、このコメントが特にお気に入りとのことでした。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


以上、クイズ形式で3本の記事を紹介してきました。

黒川記者は極端な例にしろ、日々の紙面に出てくる市民のコメントは、取材した記者一人一人が、「その人にしか言えない言葉」を引き出そうと努力した結果の表れです。

記事の終盤に出てくることも多いですが、読み飛ばさず、チェックしてみると、思わずほっこりするようなせりふに出合えるかもしれませんよ。


<シャープ>2006年入社。黒川記者は初任地の先輩で、いろいろと薫陶を受ける。朝起きると、まず神戸新聞の紙面ビューワー(お申し込みはこちら)を開き、全ての地方版に目を通す(全ての記事を読んでいるわけではない)。あれこれ考えずとも、記者の感性がストレートに伝わってくる記事が好き。


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ありがとうございます。川西市の栗の収穫です(2021)
兵庫県の地方紙「神戸新聞」です。過去記事の中から、記者らがテーマごとに独自の視点で選び、背景や取材の裏話などとともに紹介します。ゆかりの有名人の逸話や、ほっこりする地域の話題など兵庫の魅力を、毎週水曜正午と土曜午後6時に投稿します。「おもろい」と思われた方、ぜひフォローください