民俗学者、柳田国男(兵庫県福崎町出身)ゆかりの兵庫にはユニークな伝統行事や風習が残されています。8月中旬の帰省が多くなる時期に合わせ、播磨、摂津、但馬、丹波、淡路の旧五国の盆行事を取り上げようと、過去の紙面をくっていたらある記事に目がとまりました。謎に満ちた風習を追いかけた支局長の奮闘とともに播州人3号が紹介します。
「おしゃらいさん」と呼ぶそうです。
過去30年ほどで紙面に紹介されたのはたったの7回。
しかも最初の1本は4年前でした。
兵庫県最北端、日本海に面した香美町香住区の集落に残された風習です。
棚に花や夏野菜…これって何?
盆の風習 おしゃらいさん
ご先祖さまを迎え、棚経も
前の年から気になり、1年待って原稿にしたようです。
こういう場合、ついつい翌年も忘れてしまうものですが、住職と出会う幸運もあって取材は進みます。
が、書いてみると謎ばかり。そこで腰を据えた取材に切り替えたのか、手がかりを求めて支局の連絡先まで掲載する熱の入れようです。
1週間後、「続報」が掲載されます。
お盆に飾る不思議な棚
おしゃらいさん 見た目いろいろ
各地の写真は集まりますが、情報呼び掛けの結果は芳しくありません。
そこで記者のとった行動は―
香住の「おしゃらいさん」
美しき文化よ 次代に
呼び名「お精霊」が由来か
いったん「(終)」としましたが、情報提供が続きます。
兵庫県外からのものもあり、「番外編」が9月に掲載されていました。
「おしゃらいさん」番外編
精霊棚 西日本各地に
「うちでもある」県外から目撃情報
岡山「ボニ棚」、福井や愛知「盆棚」…
素朴な民間信仰を反映
紙面に掲載された7本のうちの1本は、取材を続けてきた記者の離任の際のコラムでした。
離任あいさつ 知った記者のだいご味/黒川裕生
一連の記事はあの黒川記者のものでした。関連の投稿はこちら
7本の「おしゃらいさん」のうち、最新の記事も紹介します。
黒川記者がスポットを当てた集落の伝統行事を後任の支局長も訪れます。
県の調査資料と地元出身の名優の回想録を添え、記事に厚みを持たせていました。
香住の盆行事「おしゃらいさん」
有縁無縁の霊魂供養
江戸期から 庭に棚飾り供え物
▼あの世とこの世結ぶ はしごなんやて
「日本一の斬られ役」福本清三さんも回想
<播州人3号>
1997年入社。柳田国男の没後50年に合わせ、播磨の伝統行事を取り上げる企画にデスクとして関わりました。掲載の条件を「これまで紙面で取り上げられていない行事」としました。「さすがに『初出』に縛るのは難しいだろう」と予想していましたが、聞いたこともないような風習が集まりました。起源や詳しい経緯は不明なものばかりでしたが、先祖から受け継いだ伝統を実直に守り、次の世代に引き継ぐ―。荒っぽい方言や運転で有名な播州人ですが、別の一面も持っているようです。
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