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ひねりをきかせた交通安全標語。現場の警察官がまじ~めに考えています

春、秋の交通安全運動の期間中にもらったことはないでしょうか。街頭キャンペーンで配るチラシやグッズです。そこに印刷された標語を考えるのはコピーライターではなく、現場の警察官です。ダライバーらの記憶の片隅にとどめてもらい、事故を減らそうと日々頭をひねっています。そんな努力の成果を播州人3号が紹介します。

事故をどれだけ減らせられるか、どうやってなくすか―。
すぐに思いつくのはこちらではないでしょうか。
紙面でも数多く登場していました。「ナシ」です。

「梨」で事故は「無し」にして
たつの国道沿い、小学生らが配布

 たつの署などは20日、秋の全国交通安全運動(21~30日)が始まるのを前に、死亡事故が相次いでいるたつの市御津町岩見の国道250号沿いでキャンペーンを実施した。「事故無し」にかけて果物の梨を用意し、「交通事故は無しでお願いします」と呼び掛けながら配った。

(2021年9月21日付朝刊より)

香美 梨で交通事故〝ナシ〟に
運転者に「二十世紀」配布

 梨で「交通事故なし」に―。秋の全国交通安全運動(21~30日)に合わせ、香美町香住区下岡の国道178号で19日、特産の二十世紀梨を配布して交通安全を呼び掛けるキャンペーンが行われた。参加した関係者はドライバーに啓発グッズや梨を手渡して「事故〝ナシ〟でお願いします」と訴えた。

(2019年9月21日付朝刊より)

「梨」と「なし」。直接的な表現ですが、インパクトは十分です。
干支えとにかけたものも多く見つかりました。

無事故でワンだふる!
犬のお巡りさんがPR
加西署前

 加西署前に、干支えとにちなんだ新しい交通安全PRの看板(縦2メートル、横2・5メートル)がお目見えした。標語は、今年の干支である犬の鳴き声を盛り込んだ「今日も無事故でワンだふる!」。犬の警察官が、ドライバーを注意する絵柄で、通行者らの注目を集めている。
 同署前の広報板は、その年の干支にちなんだ標語とイラストで、交通安全を呼び掛けるもので、毎年デザインを変えている。標語は署員から募集し、加西交通安全協会のメンバーや署員らの投票で決定。今年は30点の中から交通課長(53)の作品が選ばれた。

(2006年1月14日付朝刊より)

署員らの応募作から厳正に投票で決められていることが分かります。
二つの干支を掛け合わせたものもありました。
子、丑、寅、卯、辰…。ただし順番は逆です。

交通事故を「とりサル」
干支にあやかり呼び掛け 豊岡署など

 年末の交通事故防止運動が1日に始まり、豊岡署と豊岡交通安全協会などはこのほど、豊岡市加広町のコープデイズ豊岡店近くで通行人らに交通安全を呼び掛けた。
 街頭には、署員らが着ぐるみでふんしたコウノトリとサルが登場。来年と今年の干支にあやかり「交通事故を、酉申とりさる(取り去る)」との願いを込めたという。
 干支の“迷コンビ”は、署員や同協会員ら約20人と一緒に反射材のたすきなどを通行人らに配り「夜間の事故に気を付けて、いい年越しを迎えましょう」と声をかけていた。

(2004年12月5日付朝刊より)

ひねりを利かせたものもあります。

長田署 こ「まめ」に安全確認を
ナッツ配り市民に呼び掛け

 12月1~10日の「年末の交通事故防止運動」に合わせ、交通事故や特殊詐欺への注意を呼び掛けようと、長田署はこのほど、長田区神楽町2の食品メーカー「吉田ピーナツ食品」から寄贈を受けたナッツ300袋を街頭で配った。
 ナッツの袋には同社の社訓「まめにまじめにまっすぐに」に掛けた標語のシールを添付。「道路ではこまめに安全確認/不審な電話はまじめに聞かない/まっすぐに長田の安全安心を守ります」と記した。

(2021年12月3日付朝刊より)

「ナッツ」を「まめ」ととらえました。
「シートベルトは締めナッツ」よりは「こまめに安全確認」の方が記憶に残りやすそうです。

チョコっとゆとりを
阪神高速など安全運転啓発
須磨の商業施設

 チョコっと気を付けて―。14日のバレンタインデーを前に、チョコレートに絡めて交通事故防止を呼び掛けるキャンペーンが9日、須磨区の商業施設「ナナ・ファーム須磨」であった。買い物客らにチョコレートや「チョコっとでもダメ! 飲酒運転」などと書かれたチラシが配られた。
 同施設運営会社の親会社である阪神高速道路と須磨署などが企画。車で来店する客が多いため、阪神高速神戸線では料金所手前での追突事故が多いことなどを説明したチラシも配られた。
 同署交通課の寺本和正警部補は「ドライバーだけでなく、歩行者の方も急がず、チョコっとゆとりを持って」と呼び掛けていた。

(2014年2月10日付朝刊より)

チョコと絡めた標語はバレンタインの季節に多く見られました。
「方言系」もあります。

「赤信号でトマっトぉ~?」
加古川署員、稲美で啓発
春の全国交通安全運動スタート

 春の全国交通安全運動が始まった6日、加古川署などは稲美町六分一のJA兵庫南の直売所「にじいろふぁ~みん」で啓発キャンペーンを行った。特産のトマトを入れた小袋に「赤信号でとまっとぉ~?」と書いたラベルを貼り、だじゃれで信号順守を呼び掛けた。
 加古川署によると、管内(加古川市、稲美、播磨町)では昨年、2015件の人身事故が発生、2410人が負傷した。このうち、信号無視が原因の事故は79件に達していた。
 キャンペーンには、同署員や加古川交通安全協会員ら約20人が参加。トマトが2~5個入り、300円で販売されていた小袋に「とまっとぉ~?」のラベルを貼り、買い物客らに「安全運転でお願いします」などと声を掛けていた。

(2018年4月7日付朝刊より)

標準語よりも、ふだん使う言い回しの方が「宣伝」効果が高そうです。

「名人芸」とも言える標語の記事が見つかりました。
兵庫に学校名を織り込む「折句」の技法です。
球児の応援に全国から聖地を訪れた人々の記憶に刻まれたはずです。

甲子園 交通安全も56代表
校名もじった標語 観客の話題に

出場校に引っ掛けた交通安全標語を掲示する兵庫県警の車両。赤い文字をつなげると「そうせいかん」(長崎・創成館高)となる=甲子園球場前
南神奈川・横浜高
東愛知・愛知産大三河高のバージョン

 第100回全国高校野球選手権大会に合わせ、兵庫県警の車両が甲子園球場(西宮市)前で電光掲示しているメッセージが、観戦に訪れた人らの注目を集めている。「よこ道は まさかの危険 迫る道」(南神奈川・横浜高)、「おおがた車 サイドにしかく 側方注意」(北大阪・大阪桐蔭高)など、その日に出場する学校名に引っ掛けた標語で大会期間中の毎日、交通安全を呼び掛けている。インターネット上でも話題となっているが、さて交通事故防止の効果のほどは?
 全56の出場校をもじった標語は7月から、甲子園署の交通課長(45)が一人でこつこつと考えたという。お気に入りは、地元の兵庫県勢2校の「いほうちゅうしゃ うっとうしいし とにかく危険」(東兵庫・報徳高)と「あぶないよ! かくにん不足! しんごう無視!」(西兵庫・明石商業高)。両校がそろって初戦に臨む11日にお披露目する。
 大会が進むにつれ、短文投稿サイト「ツイッター」などで「高校野球愛がすごい」「兵庫県警の粋な計らいをご覧ください」といった反応が相次ぎ話題に。車両の前では、入場者らが足を止めて見入っている。
 課長は「話題になっているのはうれしい。高校野球の応援と一緒に、交通安全意識も高めてもらえたら」と話している。

(2018年8月10日付朝刊より)

<播州人3号>
1997年入社。駆け出しのころ、警察署の交通安全キャンペーンを何度も取材しました。標語以外にも交通課員の考えた紙芝居や腹話術による啓発、作詞作曲した交通安全ソングの披露などを取り上げました。当時と比べると交通事故の死者数は大幅に減っています。啓発だけの効果とは思いませんが、時代劇の主役姿で高齢者らに反射材の活用や斜め横断の禁止などを繰り返し呼びかけた警察官の顔が浮かびます。

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