見出し画像

なぜか神戸に多い、イタリア語の催し3選

神戸で開かれる催しの名称にイタリア語が目立ちます。姉妹都市などと関係があるのかと思っていましたが、そうでもないようです。播州人3号が3つのイタリア語行事を紹介します。

まずは神戸の年末の風物、神戸ルミナリエです。
あの光を特別な思いで見つめる人に何度も出会いました。
始まったのは阪神・淡路大震災のあった1995年。復興に歩む被災地を勇気づける願いが込められていました。

イタリアから光の贈り物
神戸旧居留地

 南イタリア伝統の光の建築「ルミナリエ」が12月中旬、港町こうべの旧外国人居留地に登場する。クリスマスまでの11日間、夜の市街地に、七色の電光がバロック様式の建物を浮き上がらせる予定で、復興のシンボルとなりそうだ。
 ルミナリエは、英語のイルミネーションと同じ。16世紀後半から続く光の伝統芸術で、アーチ状の回廊と壁面で構成した木枠に、色とりどりの電飾を取り付け、光の建築物をつくる。遠近法を用い、遠くまで連続しているように見せるのが特徴で、イタリアでは街の中心部の広場から放射状に伸びる街路を飾る。
 日本では今夏、和歌山県が世界リゾート博1周年を記念して初公開。イタリアのアートディレクター、ヴァレリオ・フェスティ氏の手になる長さ112メートルの回廊3本と壁面2面が、華麗な光の空間を創造した。
 神戸では、震災復興のアピールや観光客誘致を狙いに、地元経済界などで実行委員会を組織。旧居留地の東西、南北の2本の道路を会場に公開する計画。
 制作に当たるのは、和歌山と同じフェスティ氏で、前回の1・5~2倍規模の光の建築を、神戸の街並みに合わせてデザインするという。12月15日から25日まで毎夜点灯される予定で、クリスマスムードを盛り上げる。

(1995年10月28日付朝刊より)

全国に知られる神戸の催しとなっていますが、もとはイタリアの伝統芸術です。
神戸が国内最初の開催と思い込んでいましたが、その年の夏に和歌山で開催されていたとは知りませんでした。
新型コロナの感染拡大の影響で、2年連続で中止が決まりましたが、代替の催しが今年も開催されます。

代替ルミナリエ 7カ所で展示
12月3~12日 三宮・元町に光の装飾

 新型コロナウイルスの影響で、昨年に続いて中止が決まった光の祭典「神戸ルミナリエ」の組織委員会は4日、分散型の代替行事を12月3~12日に実施すると発表した。直径約3メートルの光の装飾9基を三宮・元町の計7カ所に展示する。
 名称は「ロソーネ まちなかミュージアム」。光の装飾ロソーネはイタリア語で「バラ窓」を意味する左右対称の作品で、イタリアから空輸する。
 東遊園地の「慰霊と復興のモニュメント」のほか、神戸朝日ビル▽神戸ポートミュージアム南側緑地▽三宮センター街▽南京町▽大丸神戸店前▽メリケンパーク―に設置する。
 2019年の神戸ルミナリエは約347万人が訪れたが、会場の密集などを理由に2年連続で中止になった。昨年の代替行事は東遊園地に光の聖堂「カッサ・アルモニカ」を設置したが、東遊園地がリニューアル工事に入るため、今年は展示を見送る。事業費は昨年と同規模の約4500万円で、兵庫県と神戸市で負担する。

(2021年11月5日付朝刊より)

個々の作品の名もイタリア語です。
年によってデザインも光の加減も異なります。
いくつかの写真で振り返ってみましょう。

2014年
2016年
2012年
2004年

会場を訪れると、光にぬくもりがあるんだと実根します。

▢ ■ ▢ ■ ▢ ■

春にもイタリア語と関係のあるイベントが神戸で開催されています。
続いて「インフィオラータこうべ」です。
初開催はこんなふうに告知されていました。

今度は花絵咲かせよう GWに神戸で
屋外 花敷き詰め
”春のルミナリエ”に育て

 チューリップの花びらを道路などに敷き詰め、花絵を描く「インフィオラータこうべ」が、ゴールデンウイークの27日から、神戸・三宮東のあじさい商店街と北野町広場で開催される。イタリアなどヨーロッパの街で人気を呼ぶ花祭りをヒントに、神戸市や同商店街などが共同で企画した。夜にはライトアップも予定しており、同市は照明の祭典神戸ルミナリエの人気にあやかって、「花のルミナリエにしたい」と意気込んでいる。
 27日から3日間は三宮東まちづくりの会が主催し、三宮のサンパルなどに面したあじさい商店街(延長160メートル)に花びらを敷き詰める。
 チューリップ生産量日本一の富山県礪波市と、同市に本社を置く日本製麻が20万本を寄贈。
 神戸芸術工科大の学生らが作成する幅3・5メートル、長さ9メートルの花絵8枚のデザインに沿って、市民ボランティア300人が製作に参加する。
 北野町広場では29日から5月5日まで開催。神戸国際観光協会が主催し、再開した風見鶏の館の南側で、神戸電子専門学校の生徒らが風見鶏をイメージしたデザインを作成。直径約9メートルの円形の花絵を描く。
 「インフィオラータ」はイタリア語で「花を敷き詰める」という意味。イタリア・ジェンツィアーノ市の行事が有名で、日本でも東京・銀座のみゆき通りで開催されている。
 使われる花は球根栽培のために不要となったものを活用し、最終日には花壇の肥料などとして希望者に配る。

(1997年4月4日付朝刊より)

ルミナリエの2年後に始まりました。
その後、花絵を描く会場も増え、ゴールデンウィークの神戸のイベントとして定着しています。
近くで見るとかなり大きな絵のため、少し高い場所から見るのが観賞のコツです。
新型コロナの影響で、こちらも2年連続で中止となってしまいました。

2017年
2013年
2004年

最後は芸術祭「神戸ビエンナーレ」です。
残念ながら既に終了していますが、市民らが気軽に芸術とふれあう機会を提供しました。

文化創生の都市へ
神戸ビエンナーレが開幕

 神戸で初めて開かれる総合芸術祭「神戸ビエンナーレ2007」が6日午前開幕し、主会場の神戸メリケンパーク(神戸市中央区)で開会式が行われた。11月25日までの期間中、多彩な芸術作品の展示やイベントが繰り広げられる。
 神戸ビエンナーレは、文化創生の都市づくりを目指す神戸市が主催。「出合い~人・まち・芸術」をテーマに、市内各地で現代アートや伝統芸能などさまざまなジャンルの芸術が披露される。
 メーンイベントは「アート イン コンテナ展」。長さ約12メートルのコンテナを使い、国内外の芸術家らが自由に創作。入賞作45点がメリケンパークに展示されている。このほか、大道芸やジャズなど、さまざまな催しがある。
 約300人が参加した開会式では、矢田立郎神戸市長が「阪神・淡路大震災から立ち上がった神戸に、これから必要なのは文化。そのスタートとして、ビエンナーレを盛り上げたい」とあいさつ。続いて、主催者ら7人がテープカットをした。午前10時には、神戸に寄港中の船舶が一斉に汽笛を鳴らし、芸術祭の開幕を祝った。

(2007年10月6日夕刊より)

「ビエンナーレ」は「2年に1度」とか「隔年」という意味のイタリア語です。
ベネチア・ビエンナーレが世界的に有名ですが、神戸では展示にコンテナを使うなどミナト神戸らしさを感じる工夫もみられました。
ただ、2015年秋の第5回を最後に打ち切りになりました。
企業などからの寄付金が減り続け、事業費の確保が難しくなったことなどが要因で、芸術イベントを続けることの難しさがうかがえます。

▢ ■ ▢ ■ ▢ ■

いかがでしたか。いずれも名称にイタリア語を冠した催しです。
ビエンナーレの開催発表の場だったと思いますが、「なんでイタリア語なのか」と神戸市の幹部に尋ねたことがありました。答えは「特に意識したわけではない」でした。
記事にもある通り、そもそも神戸市が主催者でないものもあるため「偶然の一致」なのかもしれません。
けれど、今となってはルミナリエは「イルミネーション」ではなく、ルミナリエでないとしっくりこない気がしませんか。

<播州人3号>
1997年入社。神戸市役所を担当していたころ、神戸ルミナリエの点灯式を何年か続けて取材しました。詰めかけた大勢の人で騒がしい会場が決まって静かになる瞬間がありました。「しあわせ運べるように」のピアノ前奏が始まったときでした。続く子ども達の歌声を聞くと、胸がいっぱいになりました。

#神戸 #イタリア語 #ルミナリエ #インフィオラータ #ビエンナーレ