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将棋、そろばん、歌劇、ゴルフ、時…。わが街は「○○のまち」なり

町の魅力を一言で伝えるため「○○のまち」を掲げる市や町があります。覚えやすく、知名度アップにも役立ちます。地場産業にちなんだり、有名な施設にあやかったり。紙面で紹介された「○○のまち」を播州人3号がまとめました。

加古川市が掲げるのは「棋士のまち」です。
加古川を中心とした東播磨ゆかりの棋士が続々と誕生。市は若手の登竜門と位置づけ、日本将棋連盟公式戦を主催しています。

トップ棋士によるこんなチームも結成されました。

将棋団体戦「アベマトーナメント」
3棋士 加古川愛語る
地元ゆかりのチーム実現で
市紹介の動画出演

 加古川市ゆかりの棋士として活躍する稲葉陽八段、久保利明九段、船江恒平六段の3人が、プロ棋士による将棋の団体戦「ABEMA(アベマ)トーナメント」にチーム「加古川観光大使」として出場している。大会に合わせ、主催する動画配信サービス「ABEMA」が制作した同市の紹介動画に登場。「棋士のまち」をアピールしている。
 大会は3人一組の15チームが参加。エントリートーナメントを勝ち抜いた3人による1チーム以外は、藤井聡太王位・棋聖や羽生善治九段ら14人の棋士によるドラフト会議で編成。会議に参加した稲葉八段が久保九段と船江六段を引き当てたことで、大会4回目で初めて加古川ゆかりの棋士によるチームが実現した。
 動画は約13分半。3人は「棋士のまち加古川」と書かれた青色の法被を羽織り、久保九段の同級生が営むJR加古川駅前のたい焼き店や、加古川ヤマトヤシキ7階の「かこがわ将棋プラザ」を訪れた。名物のかつめしを食べながら船江六段が突然、稲葉八段に新婚生活の話題を振る場面も見られる。
 タイトル戦が開かれる古刹こさつ・鶴林寺にも足を運んだ。対局会場となる部屋では、過去のタイトル戦で久保九段が羽織を裏返しで着ていたエピソードを明かした。最後に稲葉八段が「加古川をアピールするためには、どんどん勝ち進んでいくことが一番」と意気込みを語っている。

(2021年4月19日付朝刊より)

宝塚は「歌劇のまち」を打ち出しています。
全国に知られた「宝塚歌劇」にあやかっています。

歌劇のまち 誇りに思い
宝塚 市民貸し切り公演に2500人

 宝塚大劇場(宝塚市栄町1)で21日、宝塚市民向けの貸し切り公演が開かれた。市と市国際観光協会が主催。市民が「歌劇のまち」を誇りに思い、魅力をPRしてもらおうと企画し、3回目となる。
 約2500人が訪れ、月組公演「舞音 MANON」「GOLDEN JAZZ」を観劇。正規料金より安いため、約2.6倍の人気だった。
 開演前には中川智子市長が「歌劇の存在が、まちに誇りを持つことを作り上げてきた。皆さんの笑顔で世界に広めて」とあいさつ。
 舞音は、仏恋愛文学の最高峰「マノン・レスコー」を、20世紀初頭の仏領インドシナに置き換えた作品で、市民は宝塚らしいロマンチックなラブストーリーに見入っていた。
 観劇した女性(66)は「歌劇のおかげで、どこに行っても『あの宝塚ですか』と言われてうれしい。観劇は久しぶりで、とても良かったです」と話していた。

(2015年11月22日付朝刊より)

「歌劇のまち」が付いた条例まで制定されています。

「歌劇のまち条例」可決
宝塚市会 ヅカ100年〝滑り込み〟

 宝塚歌劇100周年に合わせ、宝塚市議会は18日午前、歌劇団の地元らしいまちづくりを目的とする「歌劇のまち宝塚条例」を全会一致で可決した。条例は議員提案で、同日付で公布・施行される。
 条例には、宝塚歌劇が1914(大正3)年に初公演されて以来、市の知名度を高め「芸術文化の薫り高い住宅都市のイメージが形成された」と明記。市、市民、市内の事業者が一体となって取り組むことをうたう。
 市に必要な施策を講じる努力を求める一方、市民の役割として「『歌劇のまち宝塚』の文化と歴史に誇りを持って魅力あるまちづくりに努める」とする。理念条例で罰則などはない。
 宝塚市議会は今年3月、政策研究会を設置し、6月に条例案を策定した。しかしその後、既存の条例との調整に手間取り再検討。歌劇側の意見も参考にし、何とか100周年の年内成立にこぎ着けた。

(2014年12月18日夕刊より)

宝塚歌劇についてまとめた投稿はこちら

明石市が「時のまち」を掲げるのは、地理的な理由です。

「あかし時のまち大使」就任記念
 シゴセンオーに巨大名刺

 明石市立天文科学館(同市人丸町)は、同館の人気キャラクター「シゴセンオー」が「あかし時のまち大使」に就任したのを記念し、縦1・8メートル、横3メートルの巨大名刺を作製した。
 同大使は、日本標準時子午線の通る「時のまち・明石」をPRする役目を担う。シゴセンオーは「時の記念日」の今月10日、オンラインイベントで泉房穂市長から委嘱状を受け取った。
 巨大名刺は、記念撮影用に同館2階に展示。来館者には通常サイズの名刺が配られている。
 シゴセンオーは神戸市出身のCGデザイナー岡本晃さんがデザイン。高さ54メートルの同館時計塔から変身する巨大ロボットで、グッズや動画にも度々登場し人気を集めている。
 市は明石ゆかりの有名人らを大使に任命。女優の平愛梨さんら7人は「明石ふるさと大使」、魚類学者のさかなクンは「明石たこ大使」、気象予報士の蓬莱大介さんは「明石お天気大使」を務めている。

(2021年6月29日付朝刊より)

市内に天文科学館があり、6月10日の「時の記念日」には多彩なイベントも開かれています。

地場産業をPRする試みもあります。
小野市は日本有数の生産量を誇る「そろばん」です。

1面コラム「正平調せいへいちょう」でも取り上げられていました。

 「たなごころ」という日本語には優しい響きがある。手のひらの意味なのだが、手には心まで宿ると教えている◆認知症の専門医と話したときも、この言葉が話題になった。「その通りで、手には心がある。頭とつながっているから、手をよく使うと老化の予防にも効果がある」。そんな話を聞きながら、無為に過ごすわが手をじっと見つめたものだ◆繊細な指先やたなごころを刺激し老化を少しでも…ということだろう。銀髪世代向けそろばん教室が目立つ。「そろばんのまち」を掲げる小野市珠算振興会は4年前から開いている。龍野商工会議所は来年1月から「シニアそろばん教室」を始めるそうだ◆紙面を繰れば、同じような教室の記事がいくつかあった。教室ではないが、1から100までを足し、5050になるまで何度も繰り返すという年配の人の声を楽しく読んだ。このあたりは電卓とは一味違う◆日本医師会の機関紙で高齢者向け健康法を教わる。「一読、十笑、百吸ひゃっきゅう、千字、万歩」。1日に一度は新聞や本をじっくりと読み、十回は笑い、百回は深呼吸をし、千文字は書いてみよう。そして目指すは一万歩◆千というなら、この数字も加えてもらいたい。千音。そろばんをはじく、心地よい「パチパチ」の音である。

(2017年11月26日付朝刊より)

小野市に隣接する三木市は地場産業の「金物」を掲げてきましたが、最近は「ゴルフ」推しのようです。

三木を中高生ゴルフ聖地に
野球の甲子園、ラグビーの花園に続け
全国大会決定、まちPRに活用

 高校野球の聖地「甲子園」や高校ラグビーの聖地「花園」に続けと、三木市が、中高生ゴルフの聖地化によるまちのブランドづくりを進めている。全国高校・中学校ゴルフ選手権春季大会(春高・春中ゴルフ)の誘致に乗り出し、今春からの継続開催が決定。ゴルフを核とした観光にも力を入れ、産官学で支援する計画も動きだしたが、市民の盛り上がりがいまひとつなのが課題だ。
 格式と憧れから「廣野ひろのを見て死ね」という言葉が生まれた「廣野ゴルフ倶楽部くらぶ」(三木市志染町広野7)を筆頭に、市内25カ所のゴルフ場が点在する三木市。広大な山林と高速道路によるアクセスの良さから西日本一のゴルフ場数を誇る。
 この環境を生かし、さらにPRを推し進めようと、同市は春高・春中ゴルフの開催地に名乗りを上げた。毎春に開く大会には、全国の予選を勝ち抜いた400人以上の中高生が集結。継続開催することで「ジュニアゴルファーが目指す場所の代名詞」を目指す。
 会場となるオリムピックゴルフ倶楽部(同市細川町瑞穂)やチェリーヒルズゴルフクラブ(同町細川中)などは、普段からプレーできるため、開催決定後に100人以上の選手が練習で訪れたという。市ゴルフのまち推進課の担当者は「ラグビーでいえば『憧れの地・花園』と『合宿の聖地・菅平すがだいら高原(長野県)』を合わせた感じ」と例える。
 一方で、地域活性化策として「インバウンドゴルフツーリズム」にも取り組む。高齢化で国内ゴルフ人口が減るのを見越し、旅行を楽しむ海外ゴルファーに着目。金物や日本酒の原料となる酒米・山田錦に触れる体験をゴルフと組み合わせて外貨獲得を狙う。
 昨年6月には、市、三木商工会議所、市ゴルフ協会、北播磨広域観光協議会、学校法人関西学院、みなと銀行―の6者が支援体制を整え、事業を後押しする。

(2021年2月10日夕刊より)

市内の飲食店も「ゴルフのまち」推進に協力します。

 課題は、市民の間で盛り上がりに欠けることだ。春高・春中ゴルフは3月22日に開会式を予定。開催まで約1カ月だが「地域では話題にも上らず、盛り上がっていない」とある市民。
 大会や「ゴルフのまち」をアピールしようと昨秋、市内の飲食店「和空間喫茶 夢郷(ゆめのさと)」が、ゴルフ場をイメージしたメニューを開発した。抹茶粉を掛けたマドレーヌのグリーンに、スープのクルトンでティーマークを表現。メニューはソースの組み合わせなどで1~18番に分ける徹底ぶりだ。
 「他の店でもゴルフに関するメニューが広がり、市全体で盛り上げられればいい」と店主(62)。だが、そういった動きは広がらなかった。
 大会開催による地域振興には、地元の盛り上がりが不可欠。仲田一彦市長は新型コロナウイルスの影響で発信が不足していることを認めつつ、「三木の選手も出るので、広報や会員制交流サイト(SNS)で取り上げ、中学、高校のボランティアを通じて機運を高めたい」と期待を込める。

(2021年2月10日夕刊より)

記事中にある「ゴルフのまち推進課」は、ゴルフでまちのブランド化を目指すため、2020年春に新設されました。

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一風変わった「妖怪のまち」を掲げるのは福崎町です。
妖怪を研究した同町出身の民俗学者、柳田国男にちなんだ取り組みで、街のあちこちで妖怪に出会えます。

みなと銀行福崎支店
巨大パネルを並べ「妖怪のまち」PR
ショーウインドーに登場

 JR福崎駅前にある「みなと銀行福崎支店」が、道路沿いのショーウインドーで、妖怪人形を使った福崎町の町おこしをPRしている。高さ2メートル、幅1・2メートルのパネルを6枚並べ、リアルで怖いかっぱキャラ「ガジロウ」の全身写真やてんぐ、一反もめんなどの妖怪人形の設置場所を一覧できる散策マップを掲載。「妖怪のまち」の見どころをアピールする。
 みなと銀行が約100店舗で地域と連携して取り組む「ショーウインドーディスプレーコンテスト」の一環。パネルは同町福田の自動車部品メーカー「福伸電機」が企画、制作した。
 町内には、リアルな妖怪人形と並んで座れる「妖怪ベンチ」が広く点在している。そこで散策に役立ててもらおうと、パネルには13種類の所在地を一覧できるマップと、福伸電機の若手社員たちが取材した現地写真を掲載。民俗学者柳田国男の生家などの名所、名物も紹介している。
 24時間見られるように、夜にはライトアップも。コンテスト期間は3月末までだが、その後の検討中という。支店長(54)は「コロナ禍に負けず、福崎の魅力をしっかり伝えてまちを元気にしたい」と話している。

(2021年1月10日付朝刊より)

 このほか「義士のまち」(赤穂市)、「かばんのまち」(豊岡市)、「へそのまち」(西脇市)、「敬老の日発祥のまち」(多可町)などが見つかりました。人口規模の大きな都市が少ないのは、特色が複数あって一つにまとめきれないからではないでしょうか。

<播州人3号>
1997年入社。「○○のまち」を「○○の都道府県」にすればもっと複雑になるでしょう。多民族国家の旧ユーゴスラビアになぞらえ「ヒョーゴスラビア連邦」とも評される兵庫の場合、摂津や播磨、丹波など個性豊かな旧五国が一緒になった経緯もあり、かなりもめそうです。播磨(播州)の人は世界遺産・国宝姫路城などのある「お城の県」や、勇壮な屋台が練り合う「秋まつりの県」を推すでしょうが、ほかのエリアの県民からは却下されそうです。

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