パワハラ処分、トンデモ規則、暴力団の動向…。「情報公開」で明らかになったこと
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パワハラ処分、トンデモ規則、暴力団の動向…。「情報公開」で明らかになったこと

「情報公開請求」ってご存じですか? あまり馴染みがないかもしれませんが、役所の保管する書類などを見つけ出すには便利な制度です。取材で活用することも増えていますが、実は記者以外のだれもが利用できます。今回は播州人3号が、請求の手順とともに、実際に紙面になった3例を紹介します。

公にされない公務員の処分を明らかに

1つ目は公務員の処分です。
職務上の大きなミスをしたり、違法行為をしたりした公務員が処分された場合、その概要が発表されたり、記者会見して詳細が説明されたりします。
処分担当の幹部が頭を下げる映像をご覧になったことがあるでしょう。

懲戒免職(いわゆるクビ)など重い処分の場合、たいてい公表されますが、なかには非公表とされるケースもあります。

そんな処分の内容を知るために使うのが情報公開請求です。

子どもの名「逃走犬クレバ どうや」兵庫県警 パワハラ警部補に訓戒

 子どもが生まれたばかりの部下に対し、一時逃走したが発見されて話題になった兵庫県警の警察犬「クレバ号」と同じ名前を付けるよう勧めるなど不適切な言動を繰り返したとして、県警が阪神地域の警察署に勤務する50代の男性警部補を所属長訓戒にしたことが30日、神戸新聞社の情報公開請求で分かった。男性警部補は「冗談の延長だった」などと話しているという。
 処分は3月5日付。県警監察官室によると、警部補は2019年5月~20年12月、20代~40代の部下5人に対し、長時間立たせたまま説教するなどのパワハラをしたという。子どもが生まれたばかりの部下には「迷子にならないように『クレバ』と名付けたらどうや」などと発言。警部補は「(許される)人間関係ができていると思っていた」と話したという。              

    (2021年5月1日付朝刊より)

仮に「人間関係ができている」状態だったとしても、受け入れられないですね。部下にそんな発言をする警察官に、被害を打ち明けたり、困りごとを相談したりできません。

この処分は公表されず、情報公開請求によって明らかになりました。

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情報公開の手続きを簡単に説明すると、必要事項を記入した書類を窓口に出せば、文書がある場合、2週間ほどで公開されます。住所地や勤務地にある県や市町に公開請求するのはたいてい無料です。

先ほどのような文書の公開を求めるには「職員の処分について分かる文書」などと記入します。
公開されてもプライバシーに関する部分(職員の名前など)はマスキング(黒塗り)されて出てきます。

コピーを希望する場合は費用がかかるので、ある程度の枚数がありそうな場合は、請求段階で「閲覧」(見るだけ)を求めることをお勧めします。

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公務員の処分についても触れておきましょう。
「懲戒処分」は法律に基づく処分で、重い順に「免職」「停職」「減給」「戒告」があり、いずれかの処分を受ければ、昇給などにも影響します。

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これに対し「訓戒」や「厳重注意」などの処分は懲戒処分と区別して「事実上の処分」などと呼ばれます。
発表されないのはこちらの処分が圧倒的に多く、文書を求める際は「事実上の処分を含む」などと対象を広くとるようにしています。

処分を公表しない理由として「職務外の行為」や「被害者らへの配慮」などと説明されることがありますが、「被害者を守るため」と言いながら、都合の悪い処分を公表しなかったり、発表のタイミングをずらしたりすることが起きないとは言いきれません。

そのために定期的に処分関連文書の公開を求め、チェックするのが自治体や警察担当記者の重要な取材活動になっています。

広範囲の文書を「一網打尽」に

わざわざ資料を請求せずとも、窓口に出向けば答えてくれることがあります。ホームページなどで文書を積極的に公開する自治体も増えてきました。ただ、どこの部署に、どんな文書があるのか分からない場合、情報公開制度を利用すれば効率的に集めることができます。

次に紹介するのは、兵庫県の審議会を聞こうとする人に対する規則について調べたケースです。

ここまでいる? 過剰な傍聴規定 ラッパ持ち込みやコート着用禁止 兵庫県などの審議会 不必要な表現も 

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 「銃器や刃物の携帯禁止」「異様な服装は認めません」―。兵庫県が公開する審議会や協議会は、傍聴者に対する過剰ともとれる禁止項目を設けている。古い規定が形骸化したとみられ、時代錯誤や不必要な表現も目立つ。同様の決まりは神戸市など県内の自治体や国にもあり、傍聴者に対する行政側の姿勢の表れとも言えそうだ。
 政策に専門家の意見を反映するため、県は審議会などの付属機関を設けている。神戸新聞社の情報公開請求では2012年度に知事部局が公開した審議会などは42。このうち7割が傍聴者の順守事項を定めていた。
 持ち込み禁止は銃器のほか、ラッパやヘルメット、かさ、映写機など。帽子やオーバーコートの着用を禁じる項目も。「異様な服装の禁止」や「みだりに傍聴席を離れない」など、禁止の基準があいまいな文言もあった。
 傍聴者に飲食を禁じる一方で、審議する委員にはお茶を出し、職員がペットボトルを持ち込むこともある。県庁を含む公共施設での喫煙を条例で禁止しているにもかかわらず、「喫煙禁止」を明記した審議会も。子連れの傍聴を制限する内容も目立った。
 県によると、規定は審議会ごとに定め、不適切な項目が残るのは当時の議会傍聴規則などを機械的に参照したためとみられる。禁止項目を細かく掲げる会がある一方、順守事項を設けず、自由に傍聴できる例もあった。
 「運用面で傍聴者を排除するものでは決してない」と県の担当者。しかし、12年度の審議会などのうち「傍聴者ゼロ」はほぼ7割を占めるなど低迷している。

    (2014年1月8日夕刊より)


調べたのは私、播州人3号です。
きっかけは、ある審議会を聞こうとした際、受付で示された傍聴者に対する「注意」でした。思わず「おれは不審者かいな」と尋ねたくなるような規則が並んでいました。

「銃器を持った人」が入れないとありましたが、県庁内でなくとも認められないでしょう。そもそも役所内で銃を手にした人っていますかね。

こうなれば、気になるのがほかの審議会規則です。
調べようとして困りました。審議会がどれだけあるのか分かりません(「審議会」以外の名称のものもあります)。

個別に尋ねればいいのですが、担当課によって職員の対応が異なることがあります。そんなときに役立つのが情報公開請求です。

「県が傍聴を認める審議会などで、傍聴者らに対する規則などについて分かる文書一式」などと求めると、該当する文書が続々と出てきました。

公開された文書を見て驚いたことがいくつかあります。
けったいな内容は思った通りでしたが、表現が完全に一致する規定が複数ありました。おそらくいずれかの規則をコピーしたのでしょう。

業務とはいえ、この内容に疑問を感じず、傍聴する人に示していることもおかしいですね(職員の名誉のために記しますが、「時代錯誤」と感じて規則を見直した部署も複数ありました)。

傍聴者には飲み物の持ち込みを禁じている審議会で、職員がお茶のペットボトルと紙コップを委員の前に置いていく様子はコントのようでした。

子供を連れて聞く場合、わざわざ許可がいるという規定もかなりあり、あきれました。
子どもの同伴を巡っては、この記事の掲載から3年後の2017年に熊本市議会で女性市議の乳児同伴が認められず、全国的に議論が起きました。
制限しているのは、兵庫だけではなかったことが分かります。

審議会を公開する狙いって何でしょうか。
おそらく事業や施策を進める上で、どんな意見が交わされているのか、県民や市民に広く知ってもらうためでしょう。使われるのは税金ですからね。

それなのに、傍聴者を不審者扱いするような規則があれば、だれも聞きに来てくれません(もしかしたら「できるだけ聞いてほしくない」が事務局側の本音ではないかと勘繰ってしまいますが…)。

狙いを定めれば、特定の文書も


広い範囲にある文書を集める「一網打尽」方式に対し、特定の文書に絞って公開を求めることもできます。
少し古い記事ですが、「一点突破」型を紹介します。


山口組本部、増築計画 100畳超の大広間も 兵庫県警 組事務所使用を警戒 

全国最大の指定暴力団山口組が神戸市灘区篠原本町四の総本部事務所の施設増築を計画し、建築確認のための事前届出書を市に提出していたことが三十一日、分かった。隣接地に鉄筋二階建ての施設を建てる計画で、審査した神戸市は計画の一部が建築基準法に抵触する可能性があると伝えた。兵庫県警もこうした計画を把握しており、組織強化を図るための動きとみて警戒を強めている。
 神戸新聞社の情報公開請求で明らかになった。それによると、市条例などで定める事前届出制度に基づき、山口組側の代理人が六月二十八日、届出書などを市に提出した。
 総本部事務所に隣接する土地(約四百九十平方メートル)に、地上二階、地下一階建て(延べ床面積約千二百四十平方メートル)の施設の建設を計画。九月下旬に着工し、来年三月の完成を目指していた。
 同制度では、市内で新たに一定規模以上の建物を建設する場合には、確認申請を受ける前に市長あてに届け出るよう定めている。その際、関連法令に抵触しなければ、建築確認を経て着工されるが、市は七月九日付で山口組側に「建築基準法の定める用途制限に適合していない」とする判断を示した。
 具体的な抵触部分について市は明らかにしていないが、施設の間取りなどが一戸建て住宅に適合しないと判断したとみられる。

     (2007年7月31日夕刊より)

分裂する前の山口組の事務所改修計画です。
全国最大の指定暴力団山口組の総本部が神戸市内にあり、その動向は市民生活にも大きく影響します。

実際、2015年の分裂以降、抗争とみられる事件が兵庫県内でも相次ぎ、兵庫県公安委員会などがより強い制限を課す特定抗争指定暴力団に指定し、県警などが警戒を強めています。

総本部に改築の動きがあるようだ―。端緒となる情報が入ってきても、なかなか裏取りができません。県警側も計画段階ではどうしても口が重くなります。

そこで頼ったのが情報公開請求です。法律で定める手続きを、公文書でたぐる方法でした。

どんな文言で、どの資料を求めるかで担当記者はかなり苦心したようですが、公開された文書には総本部の「大改造」ともいえる計画が記されていました。

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いかがでしたか? 使いようによっては威力を発揮する情報公開制度です。
国や自治体が文書を公開する目的は、役所などが保管する公文書が市民や国民の財産という考えに基づいています。
そのため記者だけでなく、どなたでも請求できるのです。

いくつかの自治体に請求した経験から言えば、公開請求の担当窓口の職員は手続きについて丁寧に説明してくれるだけでなく、できるだけスムーズに文書を見つけ出せるようアドバイスもしてくれました。

決して難しくない情報公開制度です。
機会があれば、皆さんもぜひ利用してみてください。
例えば、交通事故が多く、信号機の設置を住民が求めている交差点があれば、これまでにどんな安全対策の議論がされてきたのか文書を請求し、確認することができます。
地域のことを詳しく知るという意味では、夏休みの自由研究などに親子で情報公開制度を使ってみるのはいかがでしょうか。

<播州人3号>
入社25年目。事件報道を巡り捜査側が特定の社への対応を拒否することがあります。「捜査を妨害した」というのがよくある理由ですが、その対応に納得がいかず、「神戸新聞の取材に応じないことを決定した経緯について分かる文書一式」と求めました。曖昧な運用のペナルティーは、ほどなく解かれました。

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うれしいです。姫路・網干の秋祭りの様子です(2019)
兵庫県の地方紙「神戸新聞」です。過去記事の中から、記者らがテーマごとに独自の視点で選び、背景や取材の裏話などとともに紹介します。ゆかりの有名人の逸話や、ほっこりする地域の話題など兵庫の魅力を、毎週水曜正午と土曜午後6時に投稿します。「おもろい」と思われた方、ぜひフォローください