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街中で出合うユニークな自販機

記者の仕事の一つに歩くことがあります。車での移動に比べ、街の変化に気づきやすく、人と話す機会も増えるためです。その日の出稿(出せる原稿)がない、とデスクに伝えると、「○○商店街を3往復してこい」と言われました(歩けば何か見つかるはず、という意味です)。そんな記者たちが街中で出合ったユニークな自動販売機を播州人3号が紹介します。

自販機が紙面で取り上げられるのには、それなりの理由があります。
①目立つ(見つけやすい)②絶対に移動しない(いつでも写真がとれる)③人通りの多い場所にある(設置の経緯やコメントを尋ねやすい)―などです。

記者が街中を歩いて不思議なものを見つける企画「まちをあるけば」でも自販機は「定番」です。

「神戸タータン」気軽に自販機で
三宮センター街

 三宮センター街1丁目商店街の3階デッキ「三Fストリート」(神戸市中央区三宮町1)で一休みしようとベンチを探していると、変わった自動販売機があった。
 本体は神戸の街をイメージした青色基調の「神戸タータン」柄で、この柄をあしらった播州ばんしゅう織ハンカチやポーチ、マスクなど10品を販売。価格は千円前後が中心だ。
 同商店街にあるアパレル企業「マック株式会社」などが、昨年12月に設置した。同社社長(46)によると、コロナ禍でも多くの人に神戸タータンを手に取るきっかけをつくりたかったという。自販機デザインは、神戸芸術工科大の学生が考案。今後は空港や駅への展開も視野に入れる。
 繁華街の真ん中で、手軽に買える神戸らしい品々。おひとついかが?

(2022年1月13日付朝刊より)

「おや」っと思えるものが見つかりさえすれば、原稿を書くのにそれほど手間はかかりません。

昨年は特に自販機の記事を目にすることが多かったように感じます。
背景には、猛威を振るった新型コロナの影響があります。

冷凍ビーフン自販機人気
ケンミン食品
気軽に購入、行列も

 ビーフン製造最大手のケンミン食品(神戸市中央区)はこのほど、電子レンジ調理で手軽に食べられる冷凍ビーフン、春雨の自動販売機1台を本社ビル前に設けた。設置してから5日で600食以上売れるなど、担当者の予想を上回る人気を集めている。
 新型コロナウイルス禍で直営レストランの利用なども減る中、非対面式の自販機で扱うビーフンを、家庭や職場で気軽に楽しんでもらおうと企画。東京の自販機メーカーが開発し、コロナ禍で導入が増えているという冷凍食品自販機「ど冷(ひ)えもん」を採用した。
 自販機で取り扱うのは「焼ビーフン」(180グラム)、「たらこと高菜のビーフン」(同)、「韓国風はるさめ炒めチャプチェ」(170グラム)の定番3品目と、定期的に入れ替える2品目の計5品目。各2食分で500~600円。いずれも通常は、生活協同組合の協同購入とケンミン食品のオンライン店で販売する限定商品だ。
 休日には販売機の前に行列ができるほどの人気ぶりで、担当者は「こんなに好評とは。予想以上の反響でうれしい」と驚く。社員が自販機に商品を補充しているといい、「大変だが、より多くの人にビーフンを知ってもらいたい」と話す。今後、状況を見ながら台数を増やしていくという。

(2021年9月10日付朝刊より)

ビーフン以外にも、冷凍ラーメンやマドレーヌ、クレープなどの自販機が紙面で取り上げられていました。

コロナの影響で落ち込んだ売り上げを何とか補おうとする企業努力ですが、24時間いつでも買えるようになるなど買う側にもメリットがありそうです。
新型コロナ関連では、こんな自販機も紹介されていました。

抗原検査キット 自販機に
加古川、高砂 新型コロナ
8分で結果 アサヒ物産「不安除く一助に」


 新型コロナウイルスの抗原検査キットの自動販売機が、加古川、高砂市の計3カ所に設置された。唾液を使って自分で簡単に検査でき、約8分で結果が出る。24時間、購入することができ、販売するアサヒ物産(加古川市西神吉町岸)の担当者は「少しでも住民の安心につながれば」とする。
 JR東加古川駅南の加古川市平岡町新在家2▽同宝殿駅北の高砂市神爪(かづめ)1▽同駅南の同市米田町米田―の計3カ所。
 キットは直径約6・5センチ、高さ約12・5センチの瓶に器具が入っており、1セット1800円(1回分)。小林薬品(大阪市)製造の「研究用」で、感染を調べる「診断用」ではない。ウイルス特有のタンパク質の有無を検出できる。
 検査するには希釈液入り容器のキャップを外し、じょうごを取り付けてから、1ミリリットルのラインに達するまで唾液を入れる。キャップを閉めて振り、スポイトでテストプレートに3滴落とす。8分後、テストプレートの「C」に線が現れれば「検出なし」、「C」「T」の両方に出れば「検出あり」となる。同種キットの自販機は、全国各地で相次いで設置されている。
 アサヒ物産は、飲料・食品の卸売りや自販機管理などを手掛け、抗原検査キットの自販機は自社でラッピング。清潔さをイメージした水色を基調とし、使い方を説明した動画につながるQRコードも、側面にあしらった。
 同社卸営業部員は「飲食店などに出掛けるのに抵抗がある人にとって、不安を取り除く一助になればうれしい」と話す。
 キットは研究用のため、コロナの症状のある人や濃厚接触の疑いがある人らは、保健所の指示に従ってPCR検査などを受ける必要がある。

(2021年11月9日付朝刊より)

人目につきやすい場所にある、という自販機の特徴を利用し、最近では、飲酒運転撲滅やシートベルト着用などを呼びかける自販機も増えています。

「視覚」ばかりではありません。こちらは「嗅覚」にも訴えます。

「淡路島なるとオレンジ」の味思い出して
香り楽しめる自販機が登場
南あわじの直売所などに

 「淡路島なるとオレンジ」の香りが楽しめる自動販売機が登場した。南あわじ市の農畜水産物直売所「美菜恋来屋みなこいこいや)」などに設置され、今月末には計10台に拡大する予定。淡路島なるとオレンジはこれから夏までが収穫シーズンだが、1年を通じて香りを知ってもらうことで、島の特産品をPRする。
 県洲本農林水産振興事務所によると、淡路島なるとオレンジは古くから島内で栽培された固有種で、各地で人気を集めた。
 農家の減少や高齢化が進んで生産量は落ち込んだが、同事務所や島内の飲食店などが復活に向けたプロジェクトを展開。「鳴門オレンジ」などと呼ばれていたのを、2018年に「淡路島なるとオレンジ」に名称を統一した。現在は島内約10の農家が栽培。味わいを生かしたスイーツなども次々生み出されている。
 爽やかな酸味とほろ苦さに加え、濃厚な香りが特徴で、社会貢献活動に取り組む飲料メーカーのダイドードリンコ(大阪市北区)と同事務所が協力。多可町のラベンダーに続く、「香る自販機」の第2弾として、設置が決まった。
 香りの成分分析を担った吉備国際大農学部(南あわじ市)の金沢功助教によると、グレープフルーツのような爽やかさに、油が古くなったような強さもあり、記憶に残りやすいという。金沢助教は「再現度は高い」と自信を見せる。
 自販機正面の専用ボタンを押すと噴射口から香りが出てくる仕組みで、商品の購入にかかわらず何度でも体験できる。ダイドードリンコの西日本第一営業部長は「島内の皆さんには香りを思い出してもらい、観光客にもこのよい香りを嗅いでもらいたい」と呼び掛けた。
 既に、ウェルネスパーク五色(洲本市)や淡路佐野運動公園(淡路市)などにも設置されている。

(2020年4月8日付朝刊より)

視覚、嗅覚と続けば、次は「聴覚」です。
鉄道ファンらを懐かしがらせる自販機が西宮に登場しました。

赤胴車の雄姿 自販機に
西宮

 飲料自動販売機に施された、赤とクリームの配色にどこか見覚えが…。そのモチーフは、今年6月に運行を終えた「赤胴車あかどうしゃ」。往年の姿を思い出してもらおうと、ダイドードリンコと阪神電鉄が武庫川団地前駅(西宮市上田東町)に自販機を設置した。
 赤胴車は1958(昭和33)年に導入され、阪神電鉄の顔として親しまれた。2015年に本線で運行を終え、以降は武庫川線のみで走っていた。
 金銭投入時や商品搬出時には、車内用の案内音声が流れる仕掛けも。コーヒーでも飲みながら、ひとときの懐かしさを感じられるかも。

(2020年8月24日夕刊より)

「赤胴車」自販機の音などを収めた動画はこちら

今回取り上げた以外にもユニークな自販機が掲載されていました。
「扱う商品」や「販売形態」などの切り口で、それらをまとめた投稿もできそうです。

<播州人3号>
1997年入社。郊外の幹線道路沿いに複数の自販機が集まったスペースをよくみかけます。缶コーヒーやたばこのほか、カップ麺やスナックなども売られ、運転途中の気分転換に最適です。10年ほど前、応援取材に訪れた加西市の自販機では靴下が売られていました。サイズやデザインからすると女性ものも。「あした朝から法事やのに靴下全部穴あいてるがな」「外回り中に川にはまって靴も靴下もべちゃべちゃや」。買う人はそんな状況の人でしょうか。

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